2023 Fiscal Year Research-status Report
適格消費者団体の差止請求訴訟における証明軽減―不当条項規制の実効性強化のために
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22K01278
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福本 知行 金沢大学, 法学系, 教授 (80362010)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 令和4年消費者契約法改正 / 提訴前交渉 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から検討を続けていた質問項目を吟味する途上において、消費者支援ネットワークいしかわの専門部会委員の助言を得て、まずはすべての適格消費者団体に質問紙を郵送して回答を依頼し、その結果を踏まえてインタビュー調査に臨むという段取りを採ることにした。質問事項は、差止請求関係業務の流れを念頭に置いて、大きく差止請求訴訟の提訴前と提訴後に分けて、前者について8項目、後者について3項目を準備した。令和5年度末までに回答を得られたのは、全25団体のうち9団体に止まっているため、包括的な分析には着手できていないが、注目すべき回答が少なからず得られた。 提訴前の段階に関しては、①「平均的損害」が問題となる事案においては、収集すべき情報が事業者しか知り得ない情報であることが多いことから、他の事案と比べて、困難を伴う、申入れをする際にトーンが少し弱くなる、心理的な負担となる等の回答が多く、提訴に至った場合を想定してやや後ろ向きにならざるを得ない傾向が裏付けられた。②交渉における事業者の姿勢はまちまちであるが、適格消費者団体の制度発足前後、あるいは各団体が認定を受ける前後で、後の方が協力的な事業者が増えているという趣旨の回答が多く、適格消費者団体制度が一定の社会的認知を得つつあることが窺えた。③令和4年改正で新設された消費者契約法12条の4(契約条項中の損害賠償予定額が平均的損害を超えると疑うに足りる合理的理由がある場合に、適格消費者団体は事業者に算定根拠を説明するよう要請できる旨の規定)について、積極的に活用したいとは考えるが、実効性を疑問視する旨の回答が多く、同条の実効性ある活用法を考案する必要性が窺えた。以上に対して、提訴後に関しては、④事業者は、営業秘密・内部文書等の主張を繰り返す、立証責任が消費者側にあることに固執し、具体的反論をしない等、事案解明に非協力的であるとの回答が多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質問紙調査をインタビュー調査に前置するよう段取りを変更したが、回答の回収状況が予想よりもはるかに芳しくなく、インタビュー調査に着手できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
質問紙への回答を未だ頂いていない団体に対して、提出を依頼するとともに、すでに提出されている回答内容を分析し、可能なところからインタビュー調査を実施する。また、令和4年消費者契約法改正によって新設された12条の4は、不十分な内容とはいえ、適格消費者団体による立証困難の軽減にむけた現時点における立法的な手当てであり、すでに回答のあった団体の多くがその積極的活用の意向を示していることが判明したので、同条の実効性を高める方策を検討する。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査に先立って、全ての適格消費者団体に対する質問紙調査を実施する段取りに変更したため、インタビュー調査の実施に使用することを想定した経費を使用することができなかったため。質問紙調査の結果をうけて、次年度にインタビュー調査を実施するために、使用する計画である。
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