2023 Fiscal Year Research-status Report
SNSへの不適切な投稿を削除等するSNS事業者の行為の規律のあり方
Project/Area Number |
22K01297
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
實原 隆志 南山大学, 法務研究科, 教授 (30389514)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | GAFA / SNS / 情報法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、SNSで投稿された、「違法」ではないものの「不適切」な投稿に対する、SNS事業者による削除等の措置の規律のあり方を明らかにすることを目的に行っている。そして、最終的には、SNS上の違法とまではいえない投稿に対する、SNS事業者自身による判断に基づく削除等の措置を規律する必要性とその内容・手法を明らかにすることを目的として研究を進めている。 2022年度に、議論の枠組みの設定を目的に、事業者と利用者の利益の法的な位置づけを検討したのに続き、2023年度はSNS事業者の定める利用規約のあり方の検討を進めた。ドイツ民法上の「規約の透明性」(ドイツ民法307条1項2文)、「法律の基本的な考えとの整合性」(同条2項1号)、「不相当な不利益」の有無(同項2号)などに関する議論、これらの規定に関する2020年7月のBGHの判決とそれに先立つ下級裁判所での諸判決やそれに関する議論を確認した。加えて、EUのデジタル・サービス規則をめぐる動向を、ドイツ国内の2021年7月のBGHの判決も踏まえて追った。 8月下旬から9月上旬にかけてドイツ国内(ミュンヘン、パッサウ)にて現地調査を行い、ドイツ語文献の収集や関係者へのインタビュー調査を行った。 これらの研究を通じて、ドイツではデジタル化が憲法論や人権論にもたらす影響が検討されるに至っており、国内でも「デジタル立憲主義」をめぐる議論が盛んになっていることを確認できた。これらの研究を業績として公表するには至らなかったが、本研究を進展させる研究は進めることはできたと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度においては本研究における関心に基づく研究を進展させることはできたが、勤務校が変わり、所属も法学部から法務研究科に変わったために、転勤や授業準備にかなりの時間を要することになった。それに伴い、今年度の研究成果を公表するための準備に充てる時間を中心に、本研究を進めるための時間に制限が加わった。そのため、当初の計画よりも遅れが生じることになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、2023年度に行った研究の成果の公表やそのための準備を進めたい。研究のテーマとしては、司法の場での規律の在り方を明らかにすることを目的に、利用規約の適用場面で用いられるべき指標の検討に移りたい。なかでも、利用規約を具体的な紛争において司法の場で適用して、当該措置の合法性を検討する際に用いられるべき指標について検討する。いつ・誰が(何が)・どのように・どこでといった、観点で、投稿時期、アカウント保有者の属性、コンテンツの種別、表示場所等が指標となる可能性を中心に検討する。そして、本研究全体の総括として「事業者と利用者の利益の法的な位置づけ」・「利用規約のあり方」・「利用規約の適用場面で用いられるべき指標」の全体を研究成果として公表できるように研究・整理を行う。そして、ドイツ国内での研究調査を、2024年度も勤務校での授業のない、8月下旬ごろに行いたい。 ほかにも、本研究の申請時以降の議論動向も踏まえ、EUのデジタル・サービス規則やデジタル市場規則をめぐる動向や、日本国内で展開されている「デジタル立憲主義」にも検討対象を広げたい。
|
Causes of Carryover |
勤務校の変更と担当する法分野が変更したのに伴い、一部の研究を進められなかったため。また、研究費の新しい学内ルールに対応する上で、他の予算から支出すべきものも少なくなかったため、「次年度使用額」が発生することになった。今年度は使用可能な予算の分類に基づいて計画的に使用できるものと思われる。
|