2022 Fiscal Year Research-status Report
規範の形成における「脅威」の役割―日独の反軍事主義の誕生ー
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22K01356
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阿部 悠貴 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (70588665)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際関係論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度前半はドイツのデュイスブルク・エッセン大学での在外研究を継続し、現地で資料収集を行い、また文献の講読に専念した。この間、コブレンツにある連邦公文書館(Bundesarchiv)を訪問することができた。加えてイギリスの大英図書館、シェフィールド大学の図書館などを訪問したが、ここで得られた資料によってシビリアン・コントロールに関する知見を広げることができた。 全体を通じて、日本では入手しがたい文献を多く収集することができたのは大変有意義であった。 9月末に日本に帰国してからも引き続き文献講読に従事した。これまで収集したドイツ語文献を包括的に渉猟し、議論の全体像を整理することができた。特にドイツの再軍備に対する反対運動、それに対する政府側の対応を通じてドイツ独自のシビリアン・コントロールの体制が出来上がったことが分かった。 そして2月末から3月にかけて国会図書館、ならびに関東にある大学図書館を訪れ、多くの文献を収集することができた。 今後はこれからの成果をまとめ、できるだけ早期に論文として発表していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツの再軍備に対する反対運動について広く関連文献を講読してきた。この反対運動は国内で大きな議論を引き起こした一方で、その中身は共産主義、極右主義、(平和主義に基づく)中立主義を含む多様なものが含まれており、これが原因となって一枚岩の対応が取れず、内部分裂を引き起こすことになった。しかし政府は再軍備に対する強い抵抗を意識しており、軍の統制、兵士であったも認められる市民的権利を強調することでこれを和らげようとしていた。このことが連邦軍における徹底されたシビリアン・コントロールに通じていったことが分かった。現在はここまでの成果をまとめた論文を執筆している。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツの再軍備過程について包括的に考察することができた。またこの過程の中で必要な資料がより明確になったこともあり、夏季にドイツにて現地でのフィールド調査を行い、資料を収集する予定である。 また同時に日本の再軍備に関する文献の収集、講読を進めていきたい。既に2月末から3月にかけて国会図書館や関東の大学図書館を訪問し、資料を集めることができた。まずはここで得られた文献を講読し、研究の基盤を整えていく予定である。
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Causes of Carryover |
本助成事業を開始した時は既にドイツにて在外研究に従事していたため、帰国費用のみを計上して申請していた。この目的で助成金を使用する予定であったが、熊本大学の規定によると出張とは往復の移動を伴うものとあり、出張費として利用することが許可されなかった。そのため不当な計画変更を強いられることになり、残金が生じることになった。
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