2023 Fiscal Year Research-status Report
規範の形成における「脅威」の役割―日独の反軍事主義の誕生ー
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22K01356
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阿部 悠貴 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (70588665)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際関係論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は国際関係論にて議論されている「規範の論争」に焦点を当て、その帰結の相違を説明することである。これまでの研究において規範は論争を通じて中身がより洗練され、定着を促すという主張されることもあれば、対立が激化し、やがて衰退に向かうという見解も示されてきた。この規範の論争の「帰結」を分ける原因は何であるのか。この点について本研究は考察している。 この点を考察するために、本研究はドイツと日本の再軍備過程を通じて形成された「反軍事主義規範」について研究している。これまで(西)ドイツの再軍備過程における反対運動について、包括的に文献を渉猟してきた。また夏季にはドイツにて調査のために渡航した。最初にフライブルクの連邦公文書館を訪問し、多くの一次資料を入手した。その後、前年に在外研究にて滞在していたデュイスブルク・エッセン大学を訪問し、附属図書館で関連文献を入手することができた。 その後、論文の執筆作業を続け、ドイツにおける再軍備反対運動、とりわけプロテスタント教会の運動について考察を深めてきた。その結果、同教会からは強い反対の声が上げられた一方で、再軍備を不可避と考え、新たに創設される軍の民主化を訴える一派もいたことがわかった。政府はこの集団との交渉を重ね、従軍牧会の整備、聖職者の兵役免除などを整備し、再軍備への支持を取り付けていったのである。現在、この点をまとめた論文を執筆中ある。 また同時に市民社会における様々な再軍備反対運動、その隆盛と衰退についても考察を行ってきた。この点についてもまとめて論文として執筆する準備が整ってきた。これが終了次第、日本との比較研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、現在は再軍備反対運動の中でもプロテスタント教会の議論をまとめている。その後は再軍備反対運動を展開した様々な市民運動、労働組合における反対運動を考察していく予定である。この作業は同時に行っており、随時論文としてまとめていく。もちろん予想しなった事実や修正を迫られる点もあったが、順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究成果を2024年5月に行われるグローバル・ガバナンス学会の研究大会にて報告する予定である。この報告は主に理論部分の考察が中心になる。 その後、夏季にドイツにて資料収集のための調査を行う。今回もフライブルクにある連邦公文書館を訪問する。昨年訪問したことで、資料の閲覧方法、取り寄せ方法などに慣れることができた。今年度も事前に準備し、資料を準備してもらった状態で渡航する良い手である。 また10月には日独社会科学学会にて報告を行う予定である。それに向けた準備も行っていく。
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Causes of Carryover |
R4年度、在外研究から帰国する際の旅費を計上していたが、熊本大学の規程により帰国は出張とは扱われず、自費で賄うことになった。そのため予算に差額が生じたが、その残額がR5年度も残っていたため。
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