2023 Fiscal Year Research-status Report
The effects of the perception of China threat on economic policies in developed countries: the case of the US Congress
Project/Area Number |
22K01384
|
Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
杉之原 真子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (80376631)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 経済安全保障 / 財政政策 / 産業政策 / 米国議会 / 利益団体 / 米国 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国が軍事上の脅威であり、それに対抗するためには、中国の技術成長を押しとどめる輸出規制や投資規制が必要であるという認識が広く持たれている。米国は、そうした動きをリードするべく、国内での政策に加え、バイデン政権下では同志国との連携を進めている。 安全保障上の懸念から推進されている国内政策には、大統領令など行政府主導のものと、議会主導の政策がある。いずれにおいても対中脅威認識は共有されており、分断が深まる政党政治の中で、二大政党の協調が見込める数少ない分野とみなされることもあるが、個別の事例については依然対立は根深い。また、企業は多くの場合、中国との関係によって得られる経済的利益を重視し、輸出規制等を限定的なものにするべく働きかけを続けている。 半導体の国内生産を主な目的とする産業政策については、米国半導体産業協会(SIA)が以前から研究開発促進のための補助金の要請を行ってきたが、主要企業は生産を海外に委託することで大きな利益を上げてきたため、国内生産の促進には積極的ではなかった。しかし、2020年の新型コロナ禍における半導体不足により、国内生産の推進が重視されるようになった。それでも、議会内の党派対立が理由で、CHIPS+法案の成立は容易ではなかった。 2023年6月の学会発表「アメリカの財政政策と米中対立」では、米国のバイデン政権が、財政政策の提案にあたって福祉や教育を含めて中国への脅威への対抗を強調したものの、個別の政策については党派対立や各議員の選挙区の事情が、脅威認識よりも強く議員の政策志向に影響し、超党派の合意はごく限定されたものとなったことを明らかにした。 米国の動きに対応した日本での展開についても研究し、日本の場合はもともと半導体素材や装置の製造に強みを持つことから、国内製造の推進に向けた政策は相対的にスムーズに採用されたことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目となる2023年度は、まず、2022年度までに構築した米国議会の議員に関するデータベースをもとに、ディスカッションペーパー「海外直接投資規制と米中対立:米議会の動向を中心に」を執筆、発表した。6月には、日本比較政治学会で米国の産業政策・財政政策に関する研究報告を行い、コメンテーターおよび聴衆から貴重なフィードバックを得た。なお7月にも国際学会であるInternational Political Science Associationで、日本の投資政策に関する報告を行うことが決まっていたが、感染症罹患のためキャンセルせざるを得なかった。 8月末から12月まで、ハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究所の日米関係プログラムに研究員として所属し、資料収集やインタビュー、研究会やシンポジウムへの参加などを通じて、近年の米国の産業政策や経済規制の展開と、それに中国脅威論が与えた影響について、情報収集や理論的視点の整理を行うことができた。また日本に関しても、対内直接投資規制や半導体産業支援政策の動向、およびそれらが米国でどのように分析されているかといった点について引き続き分析し、比較を通じた米国の事例の理解を深めた。 これらの成果を論文にまとめて12月には研究員セミナーで対内直接投資規制に関する報告をした。在外研究の成果を反映した論文を、2024年度に複数公刊予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本課題の研究3年目となる2024年度には、前年度までの研究成果のとりまとめとなる論文として、「政党の分極化と党派的対立が財政に与えた影響ーアメリカ二大政党制下の財政政策」「米国の産業政策ー米中対立と国内政治分断下での政策形成」「Political Economy of Investment Screening in Japan」 の刊行を予定している。また、4月には国際学会であるInternational Studies Associationで、日本の経済安全保障と対内直接投資規制・産業政策に関する報告を実施する。11月には日本国際政治学会において、対内直接投資規制の形成過程について報告予定である。 上記の通り予定されている成果発表に加え、さらなる情報収集を進めてこれまでに収集した資料と併せ分析をさらに深めて、新たに論文を執筆する。
|
Causes of Carryover |
おおむね順調に研究を遂行したが、差額2,662円を無理に消化することはしなかった。次年度に必要な資料の購入に充てる。
|