2022 Fiscal Year Research-status Report
経営者の心理的特性が財務報告に及ぼす影響に関する包括的研究
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22K01814
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
寺嶋 康二 千葉商科大学, 会計ファイナンス研究科, 講師 (80881549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
積 惟美 亜細亜大学, 経営学部, 講師 (50824223)
塚原 慎 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (90806374)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自信過剰 / 財務報告 / 経営者行動 / 利益調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は当初の計画通り、心理的特性に基づく会計行動の決定要因分析に取り組んだ。具体的には、まず自信過剰概念と利益の持続性に関する実証分析に取り組んだ。当該研究では、自信の程度が大きい経営者が客観的には過大評価された利益を実現可能な恒久的な利益と捉え、これをシグナルするために利益増加型の調整を実施する一方、こうした経営者が想定する恒久的利益は実現される可能性が低く、利益の持続性が低いという仮説を設定し分析を行い整合する結果を得た。当該研究については、経営者の自信過剰・利益調整・利益の持続性という三者の間に成立する理論的関係性の整理と分析結果に対する代替的解釈の検討に時間を要しているため、論文化は2023年度に持ち越す形となった。 また、自信過剰な経営者が自社株買いを避ける傾向にあることを示した論文を2021年度に査読雑誌へ投稿しており、2022年度に査読対応を行っていたが、掲載不可となったため、受けたコメントを反映しつつ分析をさらに精緻化し、2023年度に別の査読雑誌へ投稿を予定している。 さらに、経営者の自信過剰がもたらす影響に関する文献渉猟を継続的に行った結果、研究開発費のような裁量的費用に関して、一般的には実体的利益調整の手段として裁量的に削減の対象となることが指摘されているのに対し、自信過剰な経営者はより積極的に支出することが明らかとなったため、この点に関して検証を行った。検証の結果、第1に、自信の程度が高い経営者が属する企業は、そうでない経営者が属する企業に比して実体的な裁量的費用が大きく、第2に、業績連動報酬などの利益調整インセンティブが存在する場合であってもなお上記の関係は成り立っていることが明らかとなった。当該研究については2022年度末頃に論文化が済んでおり、2023年度に学会発表並びに査読雑誌への投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は当初の計画通り、心理的特性に基づく会計行動の決定要因分析に取り組み、特に経営者の自信過剰と利益調整の関係について研究を行った。当該研究によるプロジェクトレベルでの重要な進展として、経営者の自信過剰がもたらす正の側面にフォーカスする意義が明らかとなった点が指摘できる。これまで多くの先行研究では、経営者の自信過剰が投資行動や財務的行動に歪みをもたらし、株価や企業の業績に負の影響を与えると指摘されてきた。他方で、そうした負の影響ばかりが指摘されるにも関わらず、株主が自信過剰な経営者を選好しているという側面があることも指摘されており、ある種のパズルが存在する状況となっていた。2022年度における発見事項はこれまで一部の研究でしか指摘されてこなかった経営者の自信過剰が持つ正の側面に焦点を当てるものが含まれている。こうした正の側面にも目を向けることで、経営者の自信過剰がどのような会計行動に結び付き、そしてそれらがどのように評価され得るのかという本研究の課題をより現実に即した形で明らかにすることができると考えられる。以上より、当初の計画通りの研究を進めつつ、プロジェクトレベルでの発展も見られたことから、進捗状況としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度の成果をブラッシュアップし、査読雑誌への掲載を目指しつつ、当初の計画通り「心理的特性により歪んだ会計行動がもたらす経済的影響」についても分析を進めていく。ここで、着目する会計行動としては、申請時点で想定していた自社株買いを避ける傾向や、2022年度の研究により明らかとなった利益調整や投資行動に関する偏りを想定している。なお、申請時点では、経営者の自信過剰がもたらす会計行動として先行研究の多くが負の側面を指摘していたこともあり、その経済的影響としては証券市場における価格や企業の将来業績に対する悪影響を想定した仮説をメインに分析していくことを検討していた。しかし、2022年度の結果から、経営者の自信過剰が正の影響をもたらす場面も想定できることが明らかとなったため、2023年度以降の研究においても様々な状況を特定しながら経営者の自信過剰がもたらす正負両面の影響をより精緻に明らかにしていくことを計画している。 また、2024年度には自信過剰以外の心理的特性も絡めた複数の心理的特性の相互作用についても変わらず分析する予定であるため、経営者による会計行動に影響を与える他の心理的特性に関しても並行して文献渉猟を進めていく。
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Causes of Carryover |
申請時の計画において2022年度に参加予定であったAsian-Pacific Conference(APC)への参加を2023年度に変更した点、及び2022年度日本会計研究学会がオンライン開催となり旅費が不要となった点が次年度使用額発生の主な理由である。 次年度使用額については、2023年度請求額と併せて当該年度のAPC参加用の旅費に充てる他、分析に必要なデータベース(Quick Workstation AstraManager)使用料に一部充てることを計画している。
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