2022 Fiscal Year Research-status Report
イノベーション戦略実現のための組織設計と管理会計に関する研究
Project/Area Number |
22K01821
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
窪田 祐一 南山大学, 経営学部, 教授 (40329595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三矢 裕 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (00296419)
劉 美玲 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 講師 (30803407)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マネジメント・コントロール / 組織設計 / 両利き経営 / イノベーション戦略 / アントレプレナーシップ / 組織間コントロール / アメーバ経営 / M&A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,イノベーション戦略,組織設計,そして管理会計システムの3つの関係を明らかにすることにある。具体的には,(1)両利き戦略の実現につながる組織内コントロールの設計(組織設計)の解明と(2)イノベーション戦略のための組織内・組織間コントロールの関係(連結・補完の関係)を考察することにある。研究実施計画では,初年度は(1)を中心に進めることとし,両利き戦略の実現とマネジメント・コントロール・システムの機能・役割や組み合わせについて聞き取り調査を実施し,さらにアンケート調査を実施するための準備を進める予定であった。 聞き取り調査は,調査対象企業の協力のもと,事業戦略レベルにおいてM&Aを通じた新規事業への進出(知の探索)と採算管理にもとづく着実な既存事業の拡大(知の活用)を観察することができた。この調査結果は,国内学会にて報告を行った。この調査では,マネジメント・コントロール・システムとしてアメーバ経営を取り上げたが,アメーバ経営が両利き経営の実現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。これまでのアメーバ経営の研究では,知の活用にもとづくような調査報告が多いなかで,本研究は,知の探索の側面を同時に扱った点に学術的な意義を見いだせる。他方,アンケート調査についても想定した以上に進捗し,質問項目を適切に設計し,調査を実施することができた。現在,分析を進めている段階にある。 加えて,組織設計は,組織の成長段階に適合した形で行われることが求められ,またイノベーションの実現では企業家的ギャップの設定が鍵となる。そこで,アントレプレナーシップとマネジメント・コントロールとの関係について再考するための文献調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,3年の研究計画の初年度にあたる。当初の計画では,聞き取り調査を本格化するのは2年目と想定し,1年目はコロナ禍のもとで調査対象企業との信頼関係を構築しながらゆっくりと進めることを想定していた。しかし,調査対象企業から調査実施に賛同を得ることで,現場視察や多くの聞き取り調査を対面で効率よく実施することができた。それ以外の聞き取り調査もZoomを使うことで滞ることがなく,当初の想定以上にスムーズに実施することができた。そのため,組織設計に関するアンケート調査の実施は,2年目を予定していたが,これを前倒しで実施することができた。以上のように,当初の計画以上に当該年度は研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究の進め方であるが,当該年度で実施したアンケート調査の統計分析によって,両利き戦略の実現につながる組織内コントロールの設計(組織設計)について検討を加えていきたい。これまでの聞き取り調査での事業戦略レベルとは異なり,アンケート調査はアメーバ経営のリーダーを対象にしている。両利き経営を検討するうえで,聞き取り調査とは異なる知の探索や活用の活動が観察できている。また,組織設計として,コントロールの幅やアカウンタビリティの幅などを測定するとともに,アントレプレナー行動も質問項目として設定しているため,それらの分析を進めたい。加えて,過去にWeb調査を実施しており,アメーバ経営以外の経営管理システムによる組織設計についての分析も進める。こちらはサンプル数が多いため,たとえば,企業規模に応じた組織設計に相違がないかなどを確かめたいと考えている。これらの分析結果については,学会や研究会などで発表し,より適切な内容となるように改善を加えていきたい。 加えて,組織内・組織間のコントロールの関係性を探るために,外部組織から内部組織化をすることになるM&Aに注目して研究を進める。イノベーション促進のためにM&Aの活用事例が増えているが,PMIが問題となることも多い。そのような,M&AやPMIに対して管理会計システムが果たす役割などについて調査を実施したい。ただし,M&Aデータは入手困難性が高いため,研究計画を変更し,当初予定していた両利き経営を前提とするようなことはせずに調査を実施する。また,調査協力企業に対して,組織内・組織間のコントロールの関係性に関する聞き取り調査も進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも当該年度の支出が少なくなった理由は,M&Aに関わるデータベースの利用開始を次年度に遅らせたためである。したがって,次年度使用額は,データベースの利用料にあてることを計画している。
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Research Products
(3 results)