2022 Fiscal Year Research-status Report
教育法の「条理解釈」を目的とした教育法概念の思想(史)的研究
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22K02209
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山岸 利次 長崎大学, 教育学部, 准教授 (50352373)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 教育法と教育哲学・教育思想史 / 教育法概念への教育思想(史)的アプローチ / 法概念としての教育関連語彙 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、「発達」という概念につき、「子どもの権利条約」を中心に考察した。そのうえで、2023年4月1日に施行された「こども基本法」や同日に設置された「こども家庭庁」にかかかる法的問題について考察した。 近年、乳幼児期を中心に、発達心理学研究では「愛着(attachment)」への再評価がなされている。また、ヴィゴツキー心理学の観点から、発達を関係論的に考察する研究が進んでいる。このように、発達を個人のなかで完結したものではなく、他者(・大人)との関係の相においてとらえる見方は、教育法理論に極めて大きな意味を持つものである。 個人の発達が他者(・大人)との関係においてこそ実現するものであるならば、子どもの発達の権利―子どもの権利条約6条には「生命・生存・発達の権利」が規定されている―は、必然的に発達を可能とする他者(・大人)との関係を子どもたちに保障することを要請する。愛着理論やヴィゴツキー的な関係論的な発達論は、従来の枠組みを超えて、教育法が切する範囲を大きく刷新する可能性をひめたものであると評価することができる。 加えて、4月1日に施行された「こども基本法」や同日に設置された「こども家庭庁」は、その目的に「子どもの権利条約」を参照し、まさに、子どもの「生命・生存・発達の権利」を保障することを高らかに宣言している。「こども基本法」の運用や「こども家庭庁」の運営に関わり、今度どのような法による規律が可能であるかを、発達論の観点から教育条理を参照しながら検討することが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、「発達」概念につき、実定法である「子どもの権利条約」から「こども基本法」・「こども家庭庁設置法」まで視野を入れ、その法制度的含意を検討することができた。ただ、その一方で、予定していたすべての文献を検討することはできなかった。こうしたことから、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、発達・能力について、発達心理学分野の研究のみならず、社会哲学についての文献検討を行う。また、憲法・教育基本法の現段階での解釈水準の到達点を確認し、そのうえで、発達研究・社会哲学研究の成果と対照しながら法解釈の新たな枠組みを検討する。
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