2022 Fiscal Year Research-status Report
「軍縮・不拡散教育」の限界と可能性:核政策との関係に注目して
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22K02234
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 桂子 長崎大学, 核兵器廃絶研究センター, 准教授 (90646100)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 核軍縮 / 不拡散 / 教育 / 核兵器 / 非人道性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「核軍縮・不拡散教育」と「核軍縮・不拡散外交政策」との相互作用を明らかにすることで「核軍縮・不拡散教育」の限界や可能性をあぶりだし、そうした観点から「核なき世界」の実現に貢献する、より効果的な「核軍縮・不拡散教育」の在り方を探るものである。 本年度は、次年度に実施予定の「核保有国」「非核保有国」「『核の傘」依存国」における核軍縮・不拡散教育の実践状況に関するケーススタディに向けた準備作業の年と位置付け、以下を行った。①核軍縮・不拡散教育の目的や意義がどのように定義され、位置付けられてきたのか、またそれがグローバルな核軍縮・不拡散をめぐる動向によってどのように変容してきたのかを一次資料や文献から分析・整理した。②「核軍縮・不拡散教育」について異なる核政策を持つ国がどのように受け止め、議論しているかを、核軍縮・不拡散に関する国際会議(第1回核兵器禁止条約締約国会議(2022年6月、ウィーン)及び第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議(2022年8月、ニューヨーク))における議論の傍聴(前者はオンライン、後者は現地で会議参加)をし、そこで出された各国の声明文や演説、作業文書等の比較検討を通じて実証的に分析した。③第10回NPT再検討会議に参加していた各国の教育プログラム関係者に対する聞き取り調査を行った。これらの研究を通じ、とりわけ、マーシャル諸島共和国など核実験被害の歴史を持つ国での教育プログラムの例などから、核兵器が世代と国境を越えて社会、経済、環境にもたらす様々な非人道的な影響について伝える教育の在り方について多くの示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染状況が落ち着いたことで、当初の研究計画で予定していた一次資料や文献を用いた分類整理、調査研究に加えて、実際の国際会議における議論の傍聴や、軍縮・不拡散教育にかかわる実践的なプログラムを行っている各国の関係者への直接の聞き取りや情報取集が可能となったことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
核保有国、「核の傘」依存国、核兵器禁止条約批准済の非核保有国の3つの異なった核政策をとる国において、核軍縮・不拡散教育の実践状況に関する事例研究を行う。事例研究においては、各国の教育政策文書など文献調査、関連する研究・活動に対する国からの助成・補助金等に関する現況調査、カリキュラムや手法の比較検討、軍縮・不拡散教育の理論面、実践面で携わっている各国関係者への聞き取り調査を行う。また、事例研究対象国の大学生を対象に平和・軍縮に関する意識調査を実施する。2023年7月~8月にウィーンで開催される2026年NPT再検討会議に向けた第1回準備委員会に軍縮・不拡散教育プログラムに関わる実務者が多く参加することから、インタビュー調査などにその場を活用しつつ、さらなる情報収集と分析に努める。
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Research Products
(3 results)