2022 Fiscal Year Research-status Report
沖縄を題材とした戦争児童文学の課題と展望-戦中の児童雑誌の影響解明を手がかりに-
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22K02299
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
斎木 喜美子 関西学院大学, 教育学部, 教授 (30387633)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 沖縄戦 / 戦争児童文学 / 児童雑誌 / 少女 / ひめゆり学徒隊 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄戦終結以降,戦争の記録や記憶の継承はさまざまな形で行われ,とくに子どもたちへの反戦平和教育教材として,沖縄戦の物語は主流を占めてきた。しかしながら,沖縄の戦争児童文学に関する研究は未だ十分とはいえない状況がある。また,多くの子どもたちに読まれていた戦中の児童雑誌が創出した沖縄の南方イメージや愛国美談が当時の子どもに与えた影響,戦後の児童文学にも引き継がれたテーマや子ども像の解明は,先行研究においても未着手のテーマであった。 そこで本研究では,戦争の記録と記憶の継承が間接的な教育媒体である児童雑誌を介してどのように行われてきたのか,まずは書誌をまとめることで実態をつかみ,以下の3つの柱を立て研究を進めることとした。 ①戦前から戦後の児童雑誌に描かれた沖縄の南方イメージを調査し明らかにする。②雑誌読者が前述のイメージや掲載された愛国美談をどう受け止め,どのような思想を形成したかを解明する。③戦後,沖縄戦を題材とした児童文学作品に引き継がれた子ども像を明示し,戦争の記録や記憶の継承の在り方に新たな視点を提案することを目指す。 研究の初年度には先行研究の整理と,沖縄戦の語り継ぎにとって重要なモチーフであった「ひめゆり」学徒隊の物語に焦点化をあてた作品研究を行った。その結果,「ひめゆり」物語誕生の背景,本土の児童文学者と沖縄との関わり,作品に通底する思想を具体的に明らかにできた。また,作品には依然として子ども・少女の純真さに価値をおく傾向が織り込まれており,とりわけ少年少女向けの歴史読み物や学年別雑誌,コミック誌などにその傾向が強く表れていることを指摘した。加えて,戦争体験及び体験の伝達を超える作品創造には今なお課題のあることが確認できたため,次年度の研究課題としてさらに取り組んでいきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画した研究は,以下の点で順調に進んでいるものとして評価できる。 1.沖縄戦を題材とした戦争児童文学の典型例として「ひめゆり」物語を取り上げ,戦後出版された作品調査を行い書誌にまとめた。 2.沖縄の施政権返還(1972年)前後の沖縄児童文化の状況を調査するとともに,本土の児童文学者たちの沖縄との関わり,沖縄内部での「戦争」の語りの実態,作品の誕生と変遷について文献研究を行った。 3.沖縄研究の研究者たちと意見交換を行ったり,研究会を開催することで自身の研究テーマについて深めることができ,異分野の研究の成果から学ぶことができた。 4.研究代表者の勤務する大学の教員特別研究費を得て,研究成果を『戦後沖縄史の諸相 -何の隔てがあろうか』(齋木喜美子編著,関西学院大学出版会,2023年3月)に収録し刊行することができた。本書の第2章において研究代表者は,「戦争体験を語り継ぐ視座-児童文学は「ひめゆり」の物語をどのように伝えてきたか」というテーマの論文を執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画では,以下の点に新たな課題を見出すことができたので,引き続き文献研究と作品調査を中心に据えて解明に努めたい。 1.少年少女向けの歴史叢書、単行本、雑誌等に掲載された「沖縄」の児童文学作品を調査し,「ひめゆり」以外のモチーフについても明らかにする。 2.戦前の児童雑誌の現れた「沖縄」「南」のイメージと,戦後の児童雑誌に現れたイメージを比較し,児童雑誌の果たした役割,とりわけ戦争認識にかかる功罪を明らかにする。 3.引き続き沖縄研究の研究者たちとの交流を図り,沖縄史や戦争認識に関する情報取集を行いつつ,作品誕生の背景(社会的要因),読者の受容の実態についても考察を進める。 上記の研究成果については,沖縄文化協会の研究大会,24年度夏に開催される第16回アジア児童文学大会での発表を目指したい。
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Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍の影響もあり,県をまたぐ移動を伴う資料調査や学会発表が難しく,複数の研究者たちと行っている研究会の開催もオンラインで実施せざるを得ない状況があった。次年度は国立国会図書館,国際子ども図書館をはじめ,大阪国際児童文学館,沖縄県立図書館での資料調査を積極的に行い,研究成果の口頭発表も実施したい。そのための資料調査費及び研究旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)