2022 Fiscal Year Research-status Report
教員養成大学におけるICT活用能力・ICT活用指導力を育成するカリキュラムの開発
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22K02845
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Research Institution | Momoyama Gakuin University of Education |
Principal Investigator |
木村 明憲 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 講師 (10909021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 和喜雄 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00225591)
黒上 晴夫 関西大学, 総合情報学部, 教授 (20215081)
中村 浩也 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 教授 (30440598)
山本 朋弘 中村学園大学, 教育学部, 教授 (40772843)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ICT活用指導力 / 教員養成大学 / ICT活用 / チェックリスト / 教室環境 / 情報活用能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,学生が大学の4年間を通して,ICTの活用について体系的に学びを深めていくことができるカリキュラムを開発し,実施することである。このカリキュラムでの学びを充実させる要素として,学生が,ICTが整備され,それらの特性を体験しながら学ぶことができる教室で,学習者としてICTを活用する授業を体験したり,指導者としてICTを活用した授業を設計・実施したりする点にある。そして,入学時と学年終了時に,自らのICT活用指導力についてチェックテストを基に自己評価する点にある。これらの特色を基に研究を進め,学生のICT活用指導力に対する認識がどのように変容するかを明らかにし,教員養成大学におけるカリキュラムを開発する。 これまでにも,教員養成大学においてICTを活用した授業は実施されている。しかし,学生が同一のタブレットPC(アプリケーションを含む)を使用し,それらの端末が教室の様々なICTと連動する環境で,体系的に整理されたカリキュラムに則り,自らのICT活用指導力をチェックしながら授業を受ける試みは実施されておらず,これが本研究の学術的独自性と言える。 一方で,本研究では,情報活用能力を育成するカリキュラムを基に,1年生でICTの特性を知り,効果的に活用できるよう習得し,2年生でICTを活用した授業を設計・実施する。そして,3,4年生で身につけた情報活用能力を発揮して,様々な場面でICTを活用した授業に挑戦していくといった体系立った指導を行う。また,学年ごとにICT活用指導力に対する認識を測定する指標(ICT活用指導力アンケート)を開発し,学生がこれらの能力をメタ認知し,意識を高めていくと考えられる。このように,ICTが整備された環境で学生が体系的に学ぶカリキュラムと,自らのICT活用能力・活用指導力をメタ認知するアンケートを開発し,実施することが本研究の学術的創造性である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教員養成大学におけるICT活用指導力の育成に向けて,桃山学院教育大学内に未来教室を設置した。設置した未来教室では,プロジェクター,AppleTV,iPadのICTを10セット揃え,学生がこれらのICTを活用しながら主体的にディスカッションを行うことができるようにした。また,教室の3面の壁をスクリーンに加工するとともに,窓側に移動式のスクリーンを設置し,学習者がそれらのスクリーンに資料等を映し出しながら議論を深めることができるようにした。さらに,議論した内容を記述することができるクリアボードも設置し,創造的な学びができるよう工夫した。 カリキュラムの開発においては,学生が自らのICT活用指導力をチェックすることができるアンケートを学内システムの中に組み込み,1年生の入学時,修了時,2,3,4年生の開始時,修了・卒業時にICT活用指導力を確認することができる仕組みを構築した。さらに,これらのチェックを欠かさず行うことができるよう,情報に関する授業を担当する教員と共通理解を図り,それぞれの学年でICT活用指導力を確認するカリキュラムを確立した。 本研究で開発したICT活用指導力を育成するアンケート,また,これらの力を育成するためのシラバスについて検討した研究論文「教員養成大学における ICT 活用指導力の自己評価とアクティブ・ラー ニング型授業設計におけるエージェンシーに対する意識の相関」を執筆し,日本教育工学会に投稿したところ,2月に採録が決定した。本論文では,ICTの活用方法を学ぶ科目である情報リテラシーにおいて,ICT活用指導力の育成を視野に入れた探究的・協働的・調整的な学びを実施することで学生のICT活用指導力の高まりが見られたことを成果として示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策については,学生が自らのICT活用指導力をチェックするアンケート指標の改訂を考えている。2月に採録された論文では,文部科学省が2018年に示した指標で自己評価を行っていた。しかし,学校現場に出たことがない学生がこれらの指標で自らのICT活用指導力を自己評価することは困難である。そのような視点から学生が教育現場をイメージしながら回答することができる学生版ICT活用指導力の開発に努める。 また,前年度設置した未来教室を活用して今年度は授業実践を行う。オーストラリアでの学校視察から,学習者にタスクを共有した上で,学習者同士が様々な場所で協働的に学び,課題を解決することが今後の教育において重要であると考える。この教室の設備を活用しながら学生がどのように学びを深めるのか,また,学生のどのようなICT活用指導力が高まるのかについて検証を進めていきたいと考えている。今年度は1年生の情報機器の活用を学ぶ「情報リテラシー」,2年生が教育方法や授業における情報端末の活用について学ぶ「教育の方法と技術」をこの教室で実施する。達成目標の異なる2つの科目であることから,それぞれの科目の授業で教室の活用方法や学生の学び方に特徴がでてくるのではないかと予想する。そのような学生の学習する様子を観察しながら,本教室の効果を検証していきたい。 また,今後3,4年生でのICT活用指導力を育成する取組を広げていく必要がある。そのために学内でのFD研修を実施し,ICTを活用した授業が学内で広がるよう発信していきたい。
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Causes of Carryover |
未来教室設置の費用を抑えた。学生人数分のiPadの購入を考えていたが,学生が1人1台の端末を購入し入学しており,それらを有効活用することと,機種が異なっても一斉に活用することができるソフトウェアを活用することで経費を抑えることができた。
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Research Products
(2 results)