2023 Fiscal Year Research-status Report
Identifying cultural and socioecological factors that strengthen immanent justice reasoning
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22K03043
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
村山 綾 近畿大学, 国際学部, 准教授 (10609936)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 公正推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
内在的公正推論は、直接的で物理的な因果関係が存在しないなかで、不運な出来事の原因を、その人物の過去の道徳的失敗に求めるものである。内在的公正推論の文化差を検討するにあたり、当該年度は日本人を対象に思考様式と内在的公正推論の関係性を探索的に検討した。Nisbett et al. (2001) によると、東アジア人は欧米人に比べて包括的な思考様式をもち、(1)部分よりも全体に注意が向き、(2)より多くの情報を考慮した複雑な原因と結果の関係を予測し、(3)現象は常に変化すると考え、(5)中庸を好むとされる(Choi, et al., 2007)。内在的公正推論は、包括的思考様式の中でも、特に、部分より全体に注目する傾向や、複雑な因果関係を想定する傾向と関連する可能性がある。そこで、日本国籍を持つ男女360名(男性157名, 女性201名, 回答しない2名, 平均年齢39.77歳, SD = 9.74)を対象にデータ収集をし、分析を行った。街路樹が突然根こそぎ倒れ、男性の運転する車が下敷きになるという、Murayama & Miura (2023)と同様のシナリオを用いた。男性が(1)過去に窃盗の罪で在宅起訴された高校教員(悪い人)の条件、(2)熱心に生徒の指導に当たる高校教員(良い人)の条件に、(3)男性の道徳的価値情報を呈示しない条件を加え、道徳的価値の操作をした。その結果、ターゲット人物の道徳的価値に関する情報がない条件では、複雑な因果関係を想定することと内在的公正推論の強さに関連傾向が見られた。ただし、ターゲット人物の道徳的価値によって思考様式との関連が異なる傾向にあった。本研究では英語版の尺度を邦訳して用いたが、今後は、思考様式の測定方法にさらなる工夫が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画をしていた通り、既存の英語版の尺度を日本語に翻訳したものを利用したが、尺度の妥当性の問題が明らかになった。思考様式の測定方法について、さらなる検討が必要である。また、思考様式のみにとどまらず、公正推論を強める文化・社会生態学的要因を包括的に明らかにするためのデータ収集方法について再考が必要であると考えられ、現在研究計画を見直している。そのため、全体としてやや遅れているという判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
内在的公正推論を強める文化・社会生態学的要因を明らかにするために、まずは思考様式に注目した検討を行った。現状では日本人のみのデータに基づき分析を行っているため、今後は他国でのデータ収集も検討している。また、研究で用いる「不運シナリオ」について、現状では自然的運と選択的運の区別が明確ではないという課題がある。今後は、不運の位置づけをより明確化し、予備調査を行った上で、国際調査の実施につなげるよう検討している。
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Causes of Carryover |
測定変数に関する国内での予備的研究を実施した後に国際調査を行う予定にしているが、当該年度に実施した国内研究において、測定変数の再考が必要であった。そのため国際調査の実施が遅れたため、次年度使用額が生じている。また、学内業務との日程調整がつかずに予定していた国際学会への参加がなかったため、外国旅費に計上していた予算が残っている状態である。
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