2023 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a new mathematical model of grain boundary motion and development in the theory of differential equations
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22K03376
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水野 将司 日本大学, 理工学部, 准教授 (80609545)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 結晶成長 / Fokker-Planck方程式 / Lojasiewics-Simon勾配不等式 / 差分法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,空間不均一な拡散性とエネルギー則をみたす非線形Fokker-Planck系に周期境界条件を課した問題の解の長時間挙動を解析した.拡散の効果をエントロピー消散法に組み込むことにより,ポテンシャルの凸性を仮定しなくても,ポテンシャルの2階導関数が下に有界であれば,空間次元の制約のもと,拡散係数が十分に大きく,モビリティの微分が十分に小さいときに,エネルギー散逸項が指数的オーダーで減衰することを示した.また,多孔質媒質型の退化拡散と空間不均一性を持ち,エネルギー則をみたす非線形Fokker-Planck系の自然境界値問題に対する古典解の長時間挙動を考察した.古典解の存在とポテンシャルの凸性を仮定し,空間次元の制約があれば,拡散係数が十分に大きいときにエネルギー散逸項が指数的オーダーで減衰することを示した.古典解の存在を示すために,解の正値性,ならびに平衡状態が正値となるための十分条件を考察した. 次に,結晶成長の数理モデルにおけるLojasiewicz-Simonの勾配不等式とグラフ解の解析を行った.このために,グラフ解の数値解法を前進差分,後退差分によって導出し,その数値実験および数値解法の安定性について考察した.Lojasiewicz-Simonの勾配不等式によれば,グラフ解は代数的オーダーでエネルギーが収束することがわかるが,この収束の速さが最適かどうかは明らかではない.そこで,数値実験により,エネルギーが時刻無限大でどのようなオーダーで減衰するかを数値的に調べた.そして,その数値計算の安定性について,特に後退差分法による数値解法が無条件安定かどうか,前進差分による数値解法が時空間の比率により安定となるかについて考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Fokker-Planck系の長時間挙動の解析においては,ポテンシャルの凸性をはずせたことが大きい.結晶粒界の数理モデルにおいては,ポテンシャルの凸性は仮定できない可能性がある.本研究は,結晶粒界の数理モデルの数学解析に新たな可能性を示すものであると考えている.また,エントロピー消散法において,境界積分はその非線形性の強さもあいまって解析が非常に困難であったが,退化拡散の問題に対する解析手法の知見を応用することで,評価することが可能であることがわかった. 結晶粒界の数理モデルに対するLojasiewicz-Simonの勾配不等式について,数値解析を進めたことにより,勾配不等式の有用性と汎用性についての理解が進んだ.特に,Lojasiewicz-Simonの勾配不等式のグラフ解以外での応用可能性が明らかになった.さらに,変数係数,特に準線形の放物型偏微分方程式の数値解法が持つ問題点を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
Fokker-Planck系の解析において,自然境界条件でポテンシャルの凸性を仮定せずに長時間挙動を明らかにできるかを検討する.自然境界条件を課したときに,境界積分を評価できる一方で,補間不等式において追加の項が現れることがわかっている.この追加の項が評価できるかどうかを考察する. Fokker-Planck系の研究は質量保存則の解析と深い関係がある.質量保存則を基礎におく数理モデルとして,走化性の数理モデルの研究が活発に行われている.しかし,走化性のモデルにおいて,エネルギーの散逸性の有用性は明らかとなっている一方,散逸性を基礎におくモデルの構築は研究が進んでいない.そこで,空間不均一性とエネルギー散逸性を基礎におく走化性モデルの導出とその数学解析を進める. 他方で,昨年度に引き続き,絶対温度を加えた結晶成長モデルの構築を進めている.昨年度,絶対温度を加えた結晶成長モデルの構築において,結晶方位差と三重点の相互作用を組み込んだモデルを導くことができた.しかしながらそのモデルの数学解析が非常に困難であることもわかった.そこで,エネルギーをとりかえて,3本の結晶粒界の運動モデルをもとにして,絶対温度を加えたモデルの構築を進めている.特に数理モデルが他のモデルに矛盾しないことを検討しつつ,解の存在などの数学解析を進める.
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Causes of Carryover |
参加を予定していた研究集会がオンライン開催となったため,旅費に関する予算に余剰が生じた.次年度は対面開催で準備が進められていることから,その研究集会の旅費に利用する.
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Research Products
(13 results)