2022 Fiscal Year Research-status Report
結晶学的対称性をもったソレノイダルなベクトル場の不変トーラスの研究
Project/Area Number |
22K03414
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西山 高弘 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (60333241)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 結晶学的対称性 / ベルトラミ流 / 不変トーラス / 結び目 / 絡み目 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,結晶学の分野で興味をもたれて研究されているものに,ポリカテナンがある.ポリカテナンとは,環状あるいは結び目状をした無数の分子が鎖状につながった構造のことである.一方,流体力学の分野では,結び目状あるいは絡み目状になった流線や渦線をもつ流れについての研究が,トポロジカル流体力学の名で,なされている.本研究課題の一環として行った令和4年度の研究では,非粘性非圧縮性流体の定常運動を記述する定常オイラー方程式の解のうち,流速ベクトルと渦度ベクトルが平行である(流線と渦線が一致する)ベルトラミ流を取り上げ,それに結晶学的対称性,特に立方晶の対称性をもたせ,結び目状あるいは絡み目状となった不変トーラス(流管あるいは渦管に相当)の存在を数値的に実証した.ここで用いた立方晶の対称性は,国際結晶学表でリストされている対称性230種のうち,214番とされているものであり,結晶学分野では,lcv-yと名付けられたポリカテナンの存在が予想されている対称性である.また,ベルトラミ流のうち,最もよく知られている例の一つ,Arnold-Beltrami-Childress の流れ(ABC流)がもち得る最も高い対称性でもある.研究では,まず,その対称性をもつベルトラミ流の一般形を三角関数を用いて表し,含まれるパラメータに具体的な値を与え,積分曲線(すなわち流線あるいは渦線)を数値的に描き,画像として出力する工程を,様々な初期値に対して行った.そして,積分曲線が管状曲面(不変トーラス)に巻き付いている画像を,機械学習の手法も用いながら見つけ出していった.結果として,trefoil knot (三葉結び目),granny knot,true-lovers' knot をはじめとする様々な結び目状の不変トーラス,lcv-yポリカテナンに対応する様々な鎖状の不変トーラスを発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,立方晶の対称性をもつベルトラミ流について,結び目状の不変トーラスや鎖状につながった不変トーラスを見つけ出すことができたから.令和5年度を予定していた論文発表が令和4年度中に実現できたので,若干,計画よりも早く進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
結晶学的対称性を立方晶から六方晶にしてベルトラミ流を調べる.また,ベルトラミ流ではないソレノイダルなベクトル場について,結び目や絡み目を成す不変トーラスの構造を調べる.
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