2022 Fiscal Year Research-status Report
情報流のパス展開理論と神経ネットワーク活動計測に基づく生物の行動決定機構の解明
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22K03453
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 史 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (90525891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 崇 京都大学, 医生物学研究所, 特定准教授 (10741043)
杉 拓磨 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (70571305)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 複雑ネットワーク / 情報流 / 神経回路 / 摂動論 / 全脳イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
生物系において、外部刺激に応じた行動決定を担っているのは神経ネットワークの活動である。しかし、そこでどのような情報処理が実行され、どのように行動決定がなされているのかは、未解明である。例えば、神経回路のトポロジーが分かっている線虫では、ある刺激に対する行動選択を担っている局所的なネットワーク構造(モチーフ)が発見されているが、さまざまな刺激に対して常に局所的な情報処理で答えを出しているのか、あるいは、時に大域的なネットワーク構造も利用しているのかは、定かではない。本研究では、ネットワーク上の情報流を記述する理論を線虫の神経回路に適用し、刺激シグナルの伝達に重要な経路群を特定することを目指している。今年度は、確率的ブーリアンネットワークを用いて、ネットワーク上の情報の流れをパスと呼ばれる情報伝達経路の積を使って摂動的に展開する理論を、ネットワークモチーフに適用し、ネットワークモチーフの情報流の特徴を明らかにした。具体的には、ポジティブフィードフォワードモチーフは、高周波の入力シグナルを遮断するローパスフィルターの役割を持ち、ネガティブフィードフォワードモチーフは、低周波を遮断するハイパスフィルターの役割を持つことが明らかになった。さらに、そのようなフィルター機能の起源が、長さの異なる情報経路間の相互作用によって生み出されていることも分かった。一方で、長さの異なる情報経路を複数持たないポジティブ/ネガティブフィードバックモチーフは、フィルター機能を持たない。これらの成果を、オープンアクセスの国際学術誌に出版した。また、行動中の線虫の全脳イメージングに向けた顕微鏡のカスタマイズが大きく進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ネットワークモチーフの情報流の特徴を明らかにし、論文として発表できた。また、行動中の線虫の全脳イメージングに向けた顕微鏡のカスタマイズが大きく進展した。よって、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
理論側と実験側のコミュニケーションをこれまで以上に密にし、理論の生物系への適用を実現させる。
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Causes of Carryover |
理論の開発に成功したので、その理論をさらに発展させるために、開発された理論を国際会議で発表して具体的なフィードバックを得る必要性が生じたため、新たな旅費が必要となった。今後の計画の変更点は、最終的な成果発表の旅程を部分的に短くし、また、国際会議で発表する場に赴く人員を絞り込むことにすることを予定している。
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Research Products
(9 results)