2022 Fiscal Year Research-status Report
ボアホール歪計データの再解析に基づく短期的スロースリップ発生源モデルの再考
Project/Area Number |
22K03757
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
光井 能麻 名古屋大学, 減災連携研究センター, 博士研究員 (20435837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板場 智史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (90589285)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スロースリップ / 歪 / 南海トラフ / ボアホール歪計 / ゆっくりすべり / 法線応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南海トラフなどの沈み込み帯で生じる巨大地震の発生メカニズム解明に向けて、プレート境界の岩石が長期間かけて変形・流動する仕組みを理解することを目的としている。岩石の摩擦実験では、摩擦「面」でのすべりだけではなく、摩擦「層」の変形・流動により、境界面に対して法線方向にも変形する様子が観察されている。同様の変形がプレート境界でも生じている可能性を観測データをもとに議論するため、プレート境界がゆっくりと変位するスロースリップイベント(SSE)、特に、ボアホール歪計で検出される短期的スロースリップイベント(S-SSE)を対象にプレート境界層の変形量を推定する。 本年度は手法の開発を行った。従来モデル(変形成分を断層すべりのみと仮定したモデル)で推定済みであるS-SSEをテスト事例として、発生源モデルの推定手法を開発し、従来の結果と比較した。なお、使用する歪計データの観測点は、S-SSEの発生源を取り囲むように配置されていることが望ましいため、新たに使用する観測点の歪計データを解析した。S-SSE発生期間に生じた歪変化量の空間分布からS-SSE発生源のすべりと法線方向の変位(伸張または圧縮)を推定した。この推定結果を従来モデル(断層すべりのみ)を用いた推定結果と比較し、より良いモデルをAIC(赤池情報量基準)で比較した。その結果、本研究のモデルの方がより良い結果と判定された。また、2023年3月に打ち合わせを実施し、来年度の進め方について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に計画していた初年度の計画を全て遂行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度開発した手法を用いて、東海地域で発生した複数のS-SSEを再解析し、共通する変形様式を知る。そのため、新たに使用する観測点の歪データを解析し、S-SSE発生源のすべりと法線方向の変位(伸張または圧縮)を推定する。再推定したS-SSE発生源の変位に共通する変形様式(例えば、法線方向への変形が伸張または圧縮のどちらかに卓越しているなどの特徴があるか)を確認する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の転職に伴い、学会発表ならびに研究打ち合わせの実施が当初の予定よりも限られた回数しか実施できない状況となったため、次年度使用額が生じた。今年度開発した手法について論文執筆ならびに投稿を予定しているため、その英文校閲料等に使用する予定である。
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