2023 Fiscal Year Research-status Report
山岳域の過剰利用による土砂生産環境のリスク評価と将来予測の可能性
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22K04651
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
平松 晋也 信州大学, 農学部, 特任教授 (70294824)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 登山道侵食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度研究では,これまでに得られた登山道利用者数と表面流出水量並びに表面流出土砂量との関係を明らかにし,登山道利用者数と表面流出水量を説明変数とした登山道侵食土砂量予測モデルの構築を試みた。 登山道上で生起する表面流出土砂量の観測結果である表面流出土砂量は,表面流出水量を用いて(1)式(Qs=3.0×10-5・Q0.82)で近似可能となる。ここに,Qs:単位幅単位時間あたりの表面流出土砂量(m3/sec/m),Q:表面流出水量(m3/sec/m)である。(1)式による各流出イベント時の土砂濃度計測期間内の総表面流出土砂量の再現結果は,土砂濃度計測期間内の総表面流出土砂量に対しては概ね良好な再現精度を有しているものの,多量の土砂量が生産される大規模イベントに対しては(1)式は過小評価となる事実が確認された。このため,表面流出土砂量の説明変数としては,表面流出水量に加え登山道利用者数を追加した(2)式(Qs=4.21×10-7・N0.31・Q1.08)を再構築した。ここに,N(人)は流出イベント発生前の登山道利用者数である。表面流出水量のみを指標とした予測式である(1)式では,総表面流出水量の大きなイベントに対する再現値は過大評価となる事実が認められたのに対し,表面流出土砂量予測式の構築にあたり流出イベント発生前の登山道利用者数を説明変数として加え,間接的ではあるものの,登山道利用者の踏圧を受けることにより生産されるであろう不安定土砂量を加味することにより,表面流出土砂量予測式の精度は大きく向上する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測機器(水位計)の破損により,表面流出水量に欠測期間が生じたものの,研究の進捗を大きく左右するような致命的な影響は出ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行により,登山道から流出する土砂量すなわち高層湿原への流入土砂量を精度良く予測するためには,登山道上の不安定土砂の存在量を考慮する必要性が確認された。このため,今後は,年間を通して最も土砂生産・流下が活発となる凍上・融雪期の表面流出土砂量にも焦点を当てた予測式を構築することによって,通年の登山道侵食量の事後評価や将来予測を行う予定である。
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Causes of Carryover |
可能な限り,信州大学保有の物品の再利用に努めるとともに,研究活動の効率化を図ることにより研究が比較的順調に進んだため。次年度使用額については引き続き,登山道から生産される流出土砂量の予測モデルを構築するための調査費用や同モデルを用いた再現計算や将来予測に係る費用に充てる予定である。
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