2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05354
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
竹本 靖 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50453543)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / ラジカル / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者は、スクアレン合成酵素(SQS)の阻害剤であるYM-53601を細胞に添加し、紫外線を照射すると、紫外線照射によりYM-53601が開裂してラジカルを生成し、これが起点となってSQSが分解されること、そしてSQSのC末領域(371-397)が、このタンパク質分解に重要であることを見出した。このことは、従来非選択的と考えられていたラジカルによるタンパク質分解が、実は選択性を有してタンパク質分解を誘導している可能性を示唆する。そこで、本研究では、ラジカルによる分解に必要なラジカル感受性ペプチドシグナルを発見し、その生理的役割を解明することを目的とした。昨年度は、ラジカル、あるいはROSの産生により分解が誘導されるタンパク質を質量分析により網羅的に同定した。本年度は、同定したタンパク質の中で、ROSの一つである過酸化水素処理により発現量が低下したタンパク質に着目し、さらに詳細に解析した。同定された約1200個のタンパク質中、過酸化水素処理により50%以下に発現量が低下したタンパク質は48個存在した。その中で、細胞内で過酸化水素が発生する主なオルガネラの一つであるミトコンドリアに局在するタンパク質に着目したところ、11個存在した。これらについて、ウェスタンブロッティング法により検討したところ、タンパク質Xの発現量が過酸化水素処理により速やかに減少することを見出した。この過酸化水素処理によるタンパク質Xの発現量の低下は、還元型グルタチオンの添加で抑制された一方、プロテアソーム阻害剤やオートファジー阻害剤では阻害されなかったことから、細胞に備わったタンパク質分解系によるものではないと推察される。一方、試験官内で、細胞抽出液に過酸化水素を添加したところ、タンパク質Xが選択的に減少した。従って、過酸化水素によりタンパク質Xは直接分解されている可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ROSの一つである過酸化水素により、直接分解される可能性のあるタンパク質を同定することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今回同定したタンパク質Xの欠損変異体を作製し、どの領域が過酸化水素処理による分解に重要であるか、同定する。また、同定した領域を任意のタンパク質に融合し、過酸化水素処理により分解が誘導されるか、確認する。さらに、同定した領域と相同性の高い配列を有するタンパク質に着目し、同様に分解が誘導されるか検討する。タンパク質Xの過酸化水素処理による分解の生理的役割についても解析する。
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