2022 Fiscal Year Research-status Report
半自然草原における人為的な草原管理がニホンノウサギの行動と生息数に与える影響
Project/Area Number |
22K05698
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
中本 敦 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (80548339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 希 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (40452966)
布目 三夫 岡山理科大学, 理学部, 講師 (40609715)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ノウサギ / 半自然草原 / 蒜山 / GPSテレメトリー / 火入れ / 里山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、GPS テレメトリー法を用いて、草原管理手法のひとつである火入れが半自然草原に生息するノウサギの行動や生息数にどのような影響を与えているのかを、岡山県の蒜山草原で明らかにすることを目的としている。半自然草原のような里山環境において、人と生き物の具体的な関係性の維持機構を明らかにすることは、過去の人々の暮らしが意図せず果たしてきた歴史的な意味を理論化することにつながり、今後、自然との共生を考える上で重要な意味を持つ。 本研究では、大きく、1)ノウサギの行動追跡・食性調査(基礎生態の解明)、2)ホンドギツネの糞分析(捕食圧の評価)、3)糞粒法・INTGEP 法・自動撮影カメラ・糞DNA 分析(個体数推定)の3つの調査項目を4年間で実施する計画である。今年度は計画の初年度であるが、ノウサギの予備的な捕獲作業、ノウサギの糞のサンプリング、調査地の植生調査、ノウサギの雪上トラッキング、糞粒法によるノウサギの個体数推定、ホンドキツネの糞のサンプリングを実施した。ノウサギの予備的な捕獲作業は、餌不足のために捕獲し易いとされる積雪期において、約1週間にわたる捕獲作業を2度実施したが、結局ノウサギの生体の捕獲には至らなかった。ノウサギとキツネの糞のサンプリングは生息密度の関係から少数ではあるが順調に行えており、一部についてはDNAによる集団遺伝学的な分析を進めている。 申請段階より危惧していたように、本研究の最大の懸念材料はノウサギの生体の捕獲の成否にあるが、予想以上に難しく、罠場に設置した自動撮影カメラの映像から、ノウサギは餌による誘引が困難な動物であることが判明した。このため、当初予定していたような捕獲時期を積雪期のみに限らず、年間を通して、誘引餌の選定や罠の設置方法、罠の構造等を試行錯誤しながら実施する方法に修正し、現在、この作業に集中して研究を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請段階よりある程度予測していたことであるが、予想以上にノウサギの生体捕獲が難しく、GPS送信機の装着による個体追跡を研究の骨子としているために、捕獲がうまくいかない以上、研究が順調に進んでいるとは言えない状況にある。しかし、実際に予備的な捕獲作業を繰り返して試行錯誤した結果、どのような方法を用いれば、捕獲できそうかの目処はつきつつある。先行研究ではくくり罠や追い出し法による捕獲の成功率が高いことがわかっているが、生体を傷つける怖れのあるこれらの手法は、GPS送信機の装着による個体追跡を前提としている本研究においては使用できない。このため我々は箱罠による捕獲を試みているが、罠場に設置した自動撮影カメラの映像解析から、ノウサギは餌による誘引が困難な動物であることが判明した。このため、当初予定していたような捕獲時期を積雪期のみに限らず、年間を通して、誘引餌の選定や罠の設置方法、罠の構造等を試行錯誤しながら実施する方法に修正し、現在、この作業に集中して研究を進めているところである。また、誘引餌に頼らずとも捕獲できるような構造体についても設置・改良を予定している。 ただし、現在の遅れはある程度想定内であり、申請段階より、初年度を捕獲の成功率を高めるための予備調査にあてていたので、次年度の研究の実施には大きな障害とはならない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、引き続き、1)ノウサギの行動追跡・食性調査(基礎生態の解明)、2)ホンドギツネの糞分析(捕食圧の評価)、3)糞粒法・INTGEP 法・自動撮影カメラ・糞DNA 分析(個体数推定)の3つの調査項目を継続して実施する予定である。 特に、本研究を成功させるにあたって最も重要になる捕獲作業については、罠の細かな設定の変更が頻繁に可能になるように、代表者の所属する大学の周辺の森に、実際にノウサギの捕獲を試みながら、捕獲方法を検討し、確立するための調査地を設営した。来年度は、捕獲の本作業にあてている年であることから、実際に複数個体のノウサギを捕獲し、GPSテレメトリーによる個体追跡を実施したい。また、法律の改正等によって、機器を購入したものの簡単に使用することができなくなっていたドローンの登録と講習の受講を進め、ドローンを用いた環境評価や個体数推定にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
近年の物価高および予想以上に急激に進んだ円安によって、海外から輸入した調査機器の価格が急激に高騰した。このため今年度はGPS送信機については予定の3台のうち2台しか購入することができなかった。購入予定であった他の消耗品についても、研究室で保有する機器・在庫品と使用スケジュールの調整を行い一時しのぎ的に使用することや他の資金による購入を併用することで今年度の購入を控えた。今年度の残金を次年度に使用予定の金額と合算することで、当初の予定に近い台数のGPS送信機を購入することを優先した。GPS送信機は本研究にとって、必要不可欠の機器であり、研究機関を通じて予定通りの最低使用数の5台を揃えることが出来なければ、平均値すら算出することができず、研究成果を発表することができなくなる可能性を考えた結果、このような緊急的な判断を行った。
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