2023 Fiscal Year Research-status Report
摂食行動による情動神経回路の応答とストレスによる回路機構変容の解析
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22K06483
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 修平 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (10769037)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 扁桃体中心核 / 摂食行動 / 情動 / ストレス / 社会性行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、私たちヒトを含めた動物が生命活動を行う上で必須となるエネルギーや栄養素を摂取するための摂食行動において、情動の中枢である扁桃体にフォーカスし、摂食行動調節における情動神経回路の役割、また、ストレスによりその神経回路機構がどのように破綻し摂食行動の異常につながるかを解明する目的で進めている。2023年度においては以下の研究を実施した。 (1) 扁桃体の亜核の一つである扁桃体中心核において、摂食行動中に神経活動の変化が認められた特定の神経細胞群を対象に、DREADDによる神経回路操作を行ったが、大きな摂食量の変化は認められなかった。現在、摂食行動評価の方法の見直しを行なっている。 (2) ストレスによる摂食行動変化を調べるため、ストレスホルモンであるコルチコステロンの慢性投与マウス、社会挫折ストレスマウスの、2種類のマウスモデルを確立した。さらに行動等の評価も行い、いずれのモデルも体重変化やショ糖嗜好性の変化を含む、うつ様の症状を呈することを確認した。 (3) コルチコステロン慢性投与マウスについて、扁桃体における分子レベルの変化を解明するため、RNA-seqによる遺伝子発現変動解析を行い、扁桃体の各神経亜核で異なった遺伝子群が変動していることを明らかにした。 (4) 社会挫折ストレスマウスにおいて、画像解析による特徴的な行動変化の抽出を行い、社会性行動における新しい行動変化の指標を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
扁桃体中心核における特定の神経細胞群を対象として神経回路操作による摂食行動変化を検証したが、想定していた変化は認められなかった。しかし摂食行動評価に改善の余地もあるため、新たな評価系のセットアップを行なっている。 ストレスによる摂食行動変化を調べるためのモデルマウスの作製は順調に進捗し、2種類のモデルマウスを確立し、その行動評価も完了した。このうちの一つ、コルチコステロン慢性投与モデルマウスを対象に、扁桃体における分子レベルの変化を解明するためRNA-seqを行い遺伝子発現変動のデータを得た。現在詳細な解析を進め、論文作成に取り掛かっている。またもう一つの社会挫折ストレスモデルマウスにおいて、新たな行動評価系を立ち上げ、神経回路操作に取り掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
扁桃体における摂食行動調節への関与について、摂食行動評価系の見直しを行い、引き続き神経回路操作による検証を行う。また、2023年度に確立したストレスモデルマウスにおける摂食行動の評価も行う。 並行して、コルチコステロン慢性投与モデルマウスにおける扁桃体亜核の分子レベルの変化について、取得した遺伝子発現変動解析のデータをもとに論文を作成し投稿する。さらに、社会挫折ストレスモデルマウスを対象に神経回路操作を行い、、摂食行動以外の行動表現型についても解析を進める。
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Causes of Carryover |
初年度から実施予定であった神経回路操作実験への着手が当初の予定より遅れてしまい、2023年度も想定していた実験の予定がずれ込んだため、必要となる物品費分の差額が生じたが、2024年度に予定している実験を行うため、当初の目的通り使用を計画している。
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Research Products
(5 results)