2022 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答における脳内オキシトシン伝達の機能解明
Project/Area Number |
22K06487
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
犬束 歩 自治医科大学, 医学部, 助教 (30584776)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ストレス / オキシトシン受容体 / 前頭前皮質 / ボリュームトランスミッション / 小脳 / ウイルスベクター / ナノボディ / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
視床下部に局在するオキシトシン産生ニューロンは、多様な脳領域に入出力を持ち、社会行動・摂食・ストレスといった多様な生理現象に関与する。また、ヒトで頻繁に適応される点鼻投与は非侵襲的である大きなメリットがあるものの、その脳内への伝達には疑問が呈されてきた。本研究は、①複雑な入出力を持つオキシトシン産生ニューロンの個別の投射経路について選択的に機能を明らかにする。②オキシトシンに対するGPCRベースの蛍光センサーを用いて、ボリュームトランスミッションの脳内動態およびその機能を明らかにする。③研究に用いる各種ウイルスベクターを開発する。という3つの目的を設定している。具体的には、①については前頭前皮質のオキシトシン受容体発現細胞がストレス応答において果たす役割について解析を行った。また、②については軸索投射が少ないにも関わらず豊富なオキシトシン受容体の発現が見られる小脳を対象に研究を進めた。 令和4年度の研究実績としては、①に関して、前頭前皮質におけるオキシトシン受容体発現ニューロンとドーパミン受容体発現ニューロンとの関連性を検討した。申請者は、オキシトシン受容体のCreドライバーマウスへのAAV局所投与によって、前頭前皮質のオキシトシン受容体発現ニューロンが扁桃体基底外側核へと投射していることを見出した。また、共同研究を介した同様の手法によって、前頭前皮質のドーパミン受容体発現ニューロンも扁桃体基底外側核へと投射していることを確認した。ドーパミン受容体のサブタイプによって投射パターンは異なるが、それぞれの投射パターンを比較することでオキシトシン受容体発現ニューロンと各種ドーパミン受容体発現ニューロンとのオーバーラップを検討している。③に関してはRFP依存的にはたらくCreリコンビナーゼを開発し、視床下部室傍核から下垂体への投射などに関して論文刊行に至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小目標ごとの進捗にバラつきがあるものの、申請者が進める研究全般としては、おおむね順調である。前頭前皮質のオキシトシン受容体発現ニューロンの解析に関しては、共同研究者の人事異動などの影響を受け進捗が遅れている。一方で、ウイルスベクターの開発に関しては論文刊行に至るだけでなく、新規開発でも有望な成果が得られている。令和5年度は、各目標の進捗度を揃えるような方向で改善を図りたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状としては、研究全般の進捗状況はおおむね順調であるが、小目標ごとの進捗度には偏りがある。今後の研究の推進方策としては、それを是正する方向で研究のエフォートを再分配したい。具体的には、共同研究者の人事異動などもあり進捗が遅れている前頭前皮質のオキシトシン受容体発現ニューロンの解析にエフォートを積み増して進捗の回復を図る。ウイルスベクターの開発に関しては、有望な成果が得られていること自体は喜ばしいが、研究全般の進捗を収束させるためにエフォートを必要以上に積み増さないよう心がける。
|
Causes of Carryover |
共同研究者の人事異動に伴い、関連する実験については予定より遅延が生じている。そのための実験諸経費については次年度以降に使用する。
|