2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of pain relief of sinomenine and related compounds for chemotherapy-induced peripheral neuropathy
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22K06683
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Research Institution | Nihon Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
桜田 誓 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (30279244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝山 壮 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (90433557)
高野 文英 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (20236251)
片岡 裕樹 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (60805167)
斎藤 俊昭 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (00286882)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シノメニン / シノメニン誘導体 / 鎮痛 / 構造活性相関 / オキサリプラチン / 末梢神経障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
生薬「防已」には、l-モルヒネのエナンチオマーに相当する d-モルヒネ骨格を持つシノメニンが含まれる。我々は、シノメニンの鎮痛作用を高め、その作用機序を解明するため、様々なシノメニン誘導体を合成し、マウスのホルマリン誘発性急性疼痛に対する抑制効果を評価した。l-モルヒネ型骨格を持つ閉環体およびN-脱メチル化誘導体は、用量依存的に有意な鎮痛効果を示した。閉環体の鎮痛効果はシノメニンと同程度であったが、N-脱メチル化誘導体の効果はシノメニンよりも弱い。一方で、シノメニンのフェノール性水酸基のアルキル化誘導体やケトンのオキシム化誘導体、第四級アンモニウム塩化誘導体では鎮痛効果は見られなかった。 l型モルヒナン化合物は、疼痛抑制に関わるμ受容体に対して作用し、フェネチルモルヒネは作動性、ナロキソンやナルトレキソンは拮抗性を示すことが知られている。そこで、窒素原子上の置換基が鎮痛効果に与える影響を調べたところ、シノメニンの窒素原子上のメチル基をアルキル基に置き換えることで鎮痛効果が変化し、その疼痛抑制機序としてGABA受容体とμ受容体が関与することが示唆された。 今後の構造展開を検討する上で、重要な構造活性相関の情報が得られた。上記の結果は、日本薬学会第144年会(横浜)で報告している。 また、がん化学療法で末梢神経障害を高頻度に引き起こすオキサプラチンに対するシノメニンの効果を調べた結果、オキサプラチン誘発性機械的アロディニアモデルマウスに対してシノメニンは有意に抗アロディニア効果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シノメニンを医薬品として応用するには鎮痛作用が弱いため、新規鎮痛薬リードとなる強力な鎮痛作用を有するシノメニン誘導体を見出すことを目的として、種々のシノメニン誘導体を合成し、マウスのホルマリン誘発性急性疼痛に対する鎮痛効果を評価した。シノメニン誘導体の中で、シノメニンよりも強い鎮痛効果を示すものは見出せなかったが、今後の構造展開を検討する上で、重要な構造活性相関の情報が得られている。 レコンビナント TLR4発現細胞に用いたTLR4シグナル伝達に対するシノメニンの効果について調べたところ、シノメニンおよびシノメニン誘導体の細胞毒性が確認された。遺伝子導入の方法を変えて、新しいレコンビナント TLR4発現細胞アッセイ系の構築を行っている。 また、シノメニンの疼痛緩和効果が、TLR4を介したものであるかを解析するため、TLR4シグナル欠損マウスを用いて行動薬理的に比較検討する予定であったが、対象となる動物の搬入が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
化学療法誘発性の末梢神経障害に対するシノメニンおよびシノメニン誘導体の疼痛緩和の有効性とその作用機序を解析する。 1. 化学療法誘発性末梢神経障害疼痛マウスに対するシノメニンの疼痛緩和について行動薬理的に検討する。評価方法としては、機械刺激(von Freyフィラメント法)を用い、シノメニンおよびシノメニン誘導体の鎮痛効果を調べる。次にその鎮痛効果の作用機序を明らかにするため、Toll Like-receptor(TLR4)拮抗薬や各種受容体拮抗薬を用いて、TLR4受容体の関与を明らかにする。 2. シノメニンの疼痛緩和効果がTLR4を介したものであるかを解析するため、TLR4シグナル欠損マウスを用いて行動薬理的に比較検討し、シノメニンの鎮痛におけるTLR4 の関与を明らかにする。 3. レコンビナント・TLR4発現細胞を用いた、TLRシグナル伝達に対するシノメニンおよびシノメニン誘導体の効果を解析する。LPS刺激で誘導されるTLR4シグナル伝達に対して、シノメニンおよびシノメニン誘導体が抑制するか否かを解析する. 4. In silico ドッキングシュミレーションによるTLR4タンパク質とシノメニンおよびシノメニン誘導体の結合部位の予測を行う。in vivo、in vitroで得られた結果を検証するため、in silico ドッキングシュミレーションを行う。 以上の方策によって、化学療法誘発性の末梢神経障害に対するシノメニンおよびシノメニン誘導体の疼痛緩和の有効性とその作用機序をin vivo、in vitro、in silicoの手法を用いて解析し、化学療法誘発性末梢神経障害の予防・治療へと発展させるための基礎的エビデンスの確立を目指す。
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Causes of Carryover |
シノメニンの疼痛緩和効果が、TLR4を介したものであるかを解析するため、TLR4シグナル欠損マウスを用いて行動薬理的に比較検討する予定であったが、対象となる動物の搬入が遅れており、実験動物費に使用する。
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