2022 Fiscal Year Research-status Report
Keap1-Nrf2制御系によるストレス応答の動的構造基盤の解明
Project/Area Number |
22K06876
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 隆史 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70508308)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | Keap1 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体は酸化ストレスや環境毒物(多くは親電子性物質)ストレスに対して、素早く応答・対応して恒常性を維持している。これらのストレスに対する応答系の破綻は様々な疾患発症と密接に関わる。ストレスセンサーKeap1は、転写因子Nrf2のユビキチン化反応を制御して生体防御の中心的役割を担う鍵因子である。これまでにKeap1-Nrf2制御系による親電子性物質や活性酸素種の感知に重要なセンサーシステイン残基が同定されたが、同制御系の活性調節機構は未だ不明である。本研究は、ストレス応答における Nrf2活性の調節機構の分子基盤解明を目的とする。X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡解析により Keap1全長の構造を明らかにする。さらに、Keap1がストレスを認識すると、どのようにNrf2のユビキチン化反応が停止するのか明らかにし、Keap1-Nrf2制御系によるストレス応答の分子メカニズム解明を目指す。 これまでKeap1の全長構造は明らかになっていないが、その原因としてKeap1は25個のシステイン残基を保持しており、それらが酸化して凝集 しやすく精製・調製が難しいことが考えられる。そこで、私たちは反応性の高いものを含むシステイン残基11個を欠失した変異体 Keap1-11Cys -less を作製した。その結果、溶液中で安定なKeap1全長タンパク質を調製することに成功した。この Keap1-11Cys-less分子では、Nrf2をユビキチン化する リガーゼ活性は保たれており、安定発現細胞株の作製により、Nrf2が恒常的に分解されていることを確認した。Keap1に加えて、Cul3や Nrf2のタンパク質発現、精製、結晶化を行い、X 線構造解析を実施した。また、クライオ電子顕微鏡法を用いて本複合体の構造解析を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、構造解析に必要なタンパク質の準備及び条件検討が順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、Keap1、Cul3、 Nrf2のタンパク質発現、精製、結晶化の条件検討を進め、X 線構造解析を実施する。また、クライオ電子顕微鏡法を用いて本複合体の構造解析を実施する。 Keap1-Cul3 複合体の構造を明らかにすることと並行して、ストレス刺激がKeap1センサーシ ステイン残基を修飾することにより、Keap1-Cul3 複合体にどのような構造変化を引き起こすのか明らかにして、細胞内で実際にNrf2ユビキチン化を停止する分子メカニズムの解明に挑戦する。 Keap1-11Cys-less 分子は主要なセンサーシステイン残基を欠失しているので、これに特定のシステイン残基のみを戻したタンパク質を作製してストレス刺激による影響を調べる。 例えば、Keap1-11Cys-less 分子にCys151のみを戻し、Cys151 によって感知される親電子性物質を添加してその影響を調べる。解析方法は、結晶構造解析・クライオ電子顕微鏡法に加えて、動的構造変化を捉えるためNMRを用いた構造解析を試みる。さらに、試験管内だけでなく、細胞内におけるKeap1複合体の構造変化を捉えるため、In-cell NMR を用いた解析を試みる。以上の解析方法を駆使して、ストレス刺激の有無によるKeap1タンパク質の動的な構造変化を明らかにし、Keap1によるユビキチンリガーゼ活性の調節機構解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
2022年度は、昆虫細胞などを用いた他の組み換えタンパク質発現系の検討を行う予定であったが、既存の大腸菌を用いたタンパク質発現系を用いて十分なサンプル調整を行うことができたため、未使用額が生じた。今後、2022年度で実施しなかった他の組み換えタンパク質発現系の検討を行うために使用予定である。
|
Research Products
(4 results)