2023 Fiscal Year Research-status Report
セロトニンシグナルを標的とした扁平上皮癌分化誘導療法の開発
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22K07157
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡崎 章悟 日本大学, 歯学部, 助教 (20784044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
莇生田 整治 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80296706)
吉川 桃子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (50570967)
相馬 智也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10624637)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | HTR7 / 扁平上皮癌 / 分化誘導療法 / セロトニン / YAP |
Outline of Annual Research Achievements |
分化異常は悪性腫瘍において広く認められる特徴の一つであり、そのメカニズムの解明は新規治療法の開発につながることが期待される。これまでの研究で、セロトニン受容体HTR7が頭頸部扁平上皮癌などの扁平上皮癌において高発現し、予後不良と相関すること、さらには、分化を抑制することにより、悪性腫瘍の進展に寄与することを見出している。本年度は、HTR7による分化抑制機序の解析及びHTR7を標的とした分化誘導剤の探索を行った。 HTR7はGタンパク質共役型受容体であり、共役Gタンパク質としてはGsとG12の2種類が報告されているが、G12のノックダウンはHTR7と同様に頭頸部扁平上皮癌の分化を促進することが認められる。そこで、G12が制御する分化関連シグナルの解析を行った。G12はRhoを介したアクチン動態制御に関与し、YAPの活性化を誘導すること、また、YAPは頭頸部扁平上皮癌の未分化性の維持に関わることが報告されていたことから、G12ノックダウンによるYAPの活性に及ぼす影響ついて検討を行った。その結果、G12ノックダウンによりYAPのタンパク質発現の低下及びYAP標的遺伝子の発現低下が認められた。以上のことから、HTR7による頭頸部扁平上皮癌の分化制御には、G12を介したYAPの活性化が関与する可能性が示された。 また、HTR7を標的とした分化誘導剤の探索として、複数種類のHTR7アンタゴニストによる頭頸部扁平上皮癌の分化に及ぼす影響について検討を行った。しかし、解析したいずれの薬剤においても、頭頸部扁平上皮癌の分化促進は認められなかった。次年度は標的分子をHTR7発現制御機構やHTR7の下流シグナルに拡大し、薬剤の探索を引き続き行うことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、HTR7と共役するGタンパク質であるG12が頭頸部扁平上皮癌においてYAPの活性を制御していることが明らかとなった。また、分化誘導可能な薬剤の同定には至っていないもののの、複数種類の薬剤について頭頸部扁平上皮癌の分化に及ぼす影響について評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
HTR7発現制御機構や分化制御機構について、より詳細な解析を進める。また、これまでの実験結果を元に、HTR7発現制御機構や下流シグナルに対する阻害剤による扁平上皮癌の分化誘導が可能であるか検討を行う。同定した薬剤については、PDXモデルなどの臨床検体を用いた解析を行い、薬剤の有効性について評価を行う。
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Causes of Carryover |
初年度に購入した試薬、消耗品を用いて効率よく研究が行えたため、本年度に購入が必要となる試薬・消耗品が少なく、残金が生じた。繰越金と令和6年度の助成金をあわせて、動物実験に必要なマウスや薬剤探索に使用する試薬などの購入に充てる予定である。
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