2022 Fiscal Year Research-status Report
αシヌクレイン伝播に誘導される神経障害メカニズムの解明と制御の試み
Project/Area Number |
22K07529
|
Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
小野 麻衣子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員 (70595876)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | αシヌクレイン / 神経障害 / PETイメージング / 生体核磁気共鳴 / グルタミン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症といったαシヌクレイノパチーは異常なαシヌクレインの凝集・蓄積が病態の主因と考えられているが、神経障害が起こる機序は未解明な点が多く、根本的な治療法は開発されていない。 異常なαシヌクレイン凝集体は、生体脳内を伝播することが近年の研究により明らかとなっている。異常なαシヌクレインは、生体脳内を伝播する過程でどのように神経障害をもたらすのか? これを明らかにするためには、ヒト病態を良好に再現したモデル動物における生体-組織横断的な解析が必要である。本研究では、申請者らが独自に開発したαシヌクレイン凝集体蓄積を可視化するポジトロン断層撮影(PET)リガンドを用いてαシヌクレイン伝播モデルマウス生体脳における凝集体蓄積を評価し、凝集体蓄積・伝播に伴う神経障害を代謝型グルタミン酸受容体PET、およびグルタミン酸CEST-MRやMRスペクトロスコピー(MRS)といった生体核磁気共鳴手法を用いて経時的に解析する。また、生体イメージングにおける変化の背景となる分子機構をモデルマウス摘出脳の組織化学的解析により明らかにするとともに、DREADD技術による神経活動操作が凝集体の伝播や線維障害に及ぼす影響を検証する。一連の取り組みを通じて、生体レベルでのαシヌクレイン凝集体蓄積・伝播における神経障害メカニズムの解明と制御を試みる。 2022年度には、αシヌクレイン伝播病態としての神経伝達異常を生体脳で評価する手法の確立を目的として、代謝型グルタミン酸受容体PET、および、生体核磁気共鳴手法としてMRSとグルタミン酸CEST-MRイメージングでの検証を実施し、αシヌクレイン伝播モデルマウスのグルタミン酸神経伝達異常を検出、評価する手法の確立に至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度には計画のとおりに、αシヌクレイン伝播病態としての神経伝達異常を生体脳で評価する手法の確立を目的として、代謝型グルタミン酸受容体PET、および、生体核磁気共鳴手法としてMRSとグルタミン酸CEST-MRイメージングでの検証を実施した。線条体へのαシヌクレイン線維接種から8週後のモデルマウスおよび対照マウスにおいて、mGluR1、mGluR2、mGluR5 PETリガンドを用いたPET撮像と、MRSおよびグルタミン酸CEST-MRイメージングを実施したところ、MRSではモデルマウス皮質領域のαシヌクレイン凝集体蓄積に関連するグルタミン酸低下を検出し得ることが明らかとなり、また、グルタミン酸CEST-MRイメージングでは脳内のグルタミン酸濃度変化を断層的に広範囲に評価し得ることが見いだされた。2022年度に計画した実施目標は達成されたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播における神経障害メカニズムの解明を目的として、生体イメージング手法による、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播と神経障害の連関の経時的な解析を実施する。具体的には、線条体へのαシヌクレイン線維接種から4、8、12、24週後のモデルマウスおよび対照マウスにおいて、αシヌクレインPETリガンド[18F]C05-05を用いた撮像を実施し、生体脳におけるαシヌクレイン凝集体蓄積の経時変化を評価する。同時に、グルタミン酸神経伝達異常を生体核磁気共鳴手法により評価し、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播との連関を生体脳で検証する。また、生体イメージングでの変化の背景となる分子機構の検証を、組織化学的手法を用いて実施する。線条体へのαシヌクレイン線維接種から4、8、12、24週後のモデルマウスおよび対照マウスの摘出脳を用いて、免疫組織化学的手法、生化学的手法によりαシヌクレインの凝集形態や神経変性を解析し、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播における神経障害メカニズムの解明につなげる。 さらに、神経活動操作が凝集体の伝播や線維障害に及ぼす影響を検証する。具体的には、DREADD(hM3Dq/hM4Di)を搭載した逆行性に感染するアデノ随伴ウィルスベクターをマウス線条体に注入し、αシヌクレインが伝播する経路の神経細胞にDREADDを発現させる。その後、線条体にαシヌクレイン線維を注入し、DREADD作動薬を投与して神経活動を活性化/抑制する。生体イメージングおよび組織化学的解析によりαシヌクレイン伝播病態を解析し、神経活動非操作群と比較することで、神経活動操作が凝集体の伝播や線維障害に及ぼす影響を検証する。
|
Causes of Carryover |
当該年度には、グルタミン酸神経伝達異常を生体脳で評価するイメージング手法の検討において安定したデータが得られたため、予定よりも使用動物数等が若干少なく済んだことにより次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて使用することで、当該年度に実施した検討にて確立された評価手法を用いた本試験を例数を増やして翌年度以降に実施し、得られる成果の強化を目指す。
|
Research Products
(15 results)