2023 Fiscal Year Research-status Report
TARP症候群のiPS細胞および動物モデルを用いた神経学的症状の病態解明
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22K07946
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
大石 公彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20287212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 ジェイムス洋尚 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90338020)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Rbm10-KOマウス / 疾患iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、Rbm10-KOマウスを用いて成体期(84日齢)の全脳のバルクトランスクリプトーム解析を実施し、Rbm10の下流遺伝子の発現量の変化と選択的スプライシングの検出を行った。結果、胎生期の間脳発生の初期マーカー遺伝子Hoxa2、Hoxd1の発現低下を検出し、本症候群と異常な脳発生との関連性が示唆された。さらに骨分化に関与する遺伝子発現の変化よりマウスの頭蓋骨CT検査を実施した結果、Rbm10-KOマウスでは頭蓋骨基底長と下顎骨面積の縮小が見られた。小頭・小顎はTARP症候群患者でもみられる症状であり、頭蓋顔面の奇形に関わる遺伝子群の候補を見出すことができている。さらにRbm10のミスセンス変異を持つ患者の血液細胞よりiPS細胞の樹立を完了し、次の神経細胞の分化実験の準備段階に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Rbm10-KOマウスを用いた実験では、成体期の脳組織を用いたトランスクリプトーム解析、組織学的観察、画像解析を実施できている。しかし飼育スペースの制限から実験に使用できるマウスの数が限られており、胎生期や出生直後のマウス脳の解析はやや遅れている。Rbm10のヘミ接合性、およびヘテロ接合性のミスセンス変異を含むiPS細胞株は樹立に成功しており、神経系細胞への分化誘導実験に使用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Rbm10-KOの胎生期および出生直後のマウス脳に対する組織学的解析とトランスクリプトーム解析を行い、小頭症や知的障害に関わる構造学的・遺伝学的要因を探る。Rbm10のミスセンス変異を含むiPS細胞はドパミン細胞等への分化誘導を実施し、その後細胞オルガネラやシナプス形成の評価、神経伝達効率・速度、シナプス間の相互作用などの表現型を分析し、疾患の病態生理を明らかにする。同時に分化した神経細胞に対してトランスクリプトーム解析を行い、マウスの発現結果と合わせて遺伝子発現量の変化とmRNAの異常なスプライシングパターンを検出し、Rbm10の機能低下と知的発達に関わる下流遺伝子の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
飼育マウスのスペースの制限により、マウスのコロニー数を増やすことが難しく、結果実験に使用できるマウスが少なかった。そのため実験数が減り、使用金額が減った現状がある。またiPS細胞から神経系細胞への分化実験も令和5年度中に進めることが難しかったため、その分の差額が発生した。
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