2022 Fiscal Year Research-status Report
トリプルネガティブ乳癌・転写調節領域解析に基づく抗癌剤耐性機構の解明
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22K08705
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
戸田 洋子 藤田医科大学, 医学部, 助教 (90814301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 吉陽 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (20725733)
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
喜島 祐子 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60381175)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | トリプルネガティブ乳癌 / 治療抵抗性 / スーパーエンハンサー / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦の乳癌による死亡者数は、年間約13,000人であり、女性の癌死亡者数の約10%を占める。トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は乳癌のサブタイプの1つであり、乳癌全体の約15%を占める。若年者に多い事、悪性度が高い事が特徴である。TNBCは、明確に治療標的分子が見つかっていないため、治療選択肢は化学療法(アントラサイクリン系とタキサン系)が用いられる。しかしながら、癌細胞はこれら治療に対する抵抗性を獲得する。治療抵抗性を獲得したTNBC細胞に対する有効な治療法は存在しない。 癌細胞が様々な治療に対して、治療抵抗性を獲得する分子レベルの解明は新規治療法の開発に向けて重要である。近年、ゲノム科学の新しい概念として、ゲノム上で「スーパーエンハンサー」と定義される強力な転写制御領域が形成される事が提唱された。癌細胞が薬剤に暴露された際に、癌細胞は自らの生存を賭けて、「スーパーエンハンサー」を形成し、薬剤剤耐性に関与する機能性RNA分子を強力に発現させると考える。 機能性RNA分子の1種であるマイクロRNAは、僅か19~22塩基の1本鎖のRNA分子であり、その機能は、細胞内で遺伝子の発現を負に制御する事である。マイクロRNAの生物学的な特性として、1種類のマイクロRNAは数百から数千の遺伝子発現に関与している。そのため、マイクロRNAの発現異常は、細胞内のRNAネットワークの破綻を引き起こす。マイクロRNAの発現異常は、癌を含む様々なヒト疾患に関与している事が明らかとなっている。癌細胞においては、マイクロRNAの発現異常は、癌の進展・転移・薬剤耐性に関与している事が明らかになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬剤(分子標的薬、抗癌剤等)を癌細胞に暴露した後、癌細胞に形成される「スーパーエンハンサー」領域の検出を行った。免疫沈降法(Chromatin immunoprecipitation: ChIP)と次世代シークエンサーを組み合わせたChIP-sequenceを行い、ゲノム上のSEの検出を行った。ChIPに用いる抗体として、H3K27ACを使用した。 これまでに、薬剤耐性に関与する「スーパーエンハンサー」領域として、ヒトゲノム上に、68領域をマップした。これらの領域の存在する機能性RNA分子(蛋白コード遺伝子、蛋白非コード遺伝子)を探索した結果、131種の機能性RNA分子がこの領域に存在する事が明らかとなった。この中には、短鎖1本鎖RNAであるマイクロRNAが多数存在していた。マイクロRNAの特徴は、1種類のマイクロRNAが、数百から数千の蛋白コード遺伝子の発現を負に制御していることである。そのため、キーとなるマイクロRNAを起点として、マイクロRNAが制御する薬剤耐性に関わる機能性RNA分子のネットワークの探索が可能となると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回検出した「スーパーエンハンサー」領域に存在するマイクロRNAに着目し、以下の解析を予定している。 (1) The Cancer Genome Atlasを用いてマイクロRNAの発現と、乳癌患者の臨床病理学解析を行う。 (2) 乳癌細胞株にマイクロRNAを核酸導入し、癌細胞の増殖能、遊走能、浸潤能、薬剤耐性について機能解析を行う。 (3) 乳癌の悪性化との関連が示唆されたマイクロRNAについては、マイクロRNAが制御する機能性RNAネットワークの探索を行う。
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Causes of Carryover |
実験に使用する試薬や消耗品のストックがあり、実験経費を節約できたため。次年度は、薬剤耐性に関与するマイクロRNAの解析に使用する予定である。
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