2023 Fiscal Year Research-status Report
食道扁平上皮癌に対する蛋白ファルネシル化に着目した新規治療開発に向けた基礎的研究
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22K08778
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
田中 智和 佐賀大学, 医学部附属病院, 助教 (60781903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芥川 剛至 佐賀大学, 医学部, 助教 (40839057)
伊藤 孝太朗 佐賀大学, 医学部, 助教 (80920967)
能城 浩和 佐賀大学, 医学部, 教授 (90301340)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 食道扁平上皮癌 / ファルネシル化 / ファルネシル転換酵素阻害薬 / 低酸素誘導因子 / 上皮間葉転換 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
・初年度に、各種食道癌細胞株において、FTI投与によって細胞増殖能、浸潤能、遊走能が明らかに抑制されること、癌特有のエネルギー代謝(Warburg effect)に関し、FTI投与によってその是正効果を認めること、さらに、FTI投与によってアポトーシスが誘導されることを確認した。また、いずれの細胞株においても低酸素誘導因子(HIF-1α)の発現が確認され、さらにFTIによる発現抑制効果を確認した。 ・当該年度においては、前述の結果に対する再現性確認実験を行い、同様の結果が得られることを確認した。次いで、FTIによるHIF-1α発現抑制により、HIF-1αの代表的な下流遺伝子であるALDOC、LDHA、PDK-1、VEGFC、CA9、ANGPL4の発現が抑制されることを確認した。細胞株におけるFTase、ファルネシル化の程度を評価では、細胞株間に有意な差は認めなかった。また、FTI投与によってFTaseの発現は影響を受けなかったが、ファルネシル化は明らかに抑制されていた(HDJ2で評価)。また、ファルネシル化に関連する炎症因子であるTNF-αおよびIL-6の発現を評価したところ、FTIによる明らかな抑制効果を認めた。さらに癌関連遺伝子群としてEMT関連遺伝子に対するFTIの影響を評価したところ、FTIによってSnail、ZEB、SOX2、vimentinの発現は抑制され、一方でE-cadherinの発現復帰を認めた。活性酸素に注目した実験では、FTIによって細胞内活性酸素レベル上昇すること、一方でNrf2およびKeap-1の発現は抑制されること、さらに抗酸化酵素であるGPX2、SOD2、CATの発現も低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度までに概ねin vitro実験を完了しており、既にin vivoモデルとしての動物実験に着手している。また、臨床サンプルを用いた検証実験に関しても準備を完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様に定期的なミーティングを継続しつつ、今後も当初の研究計画通りに実験を進めていく。前年度、当該年度で食道扁平上皮癌細胞株レベルでFTIの抗腫瘍効果、その抗腫瘍効果のターゲットとなっている遺伝子、シグナル伝達、pathwayの変化についてin vitroでの実験をほぼ完了しており、今後はin vivoモデルとしての動物実験でFTIの抗腫瘍効果を評価、さらに臨床サンプルを用いた検証実験を実施する。既に論文作成にも着手しており、本年度中に国際的英文誌に投稿する予定とする。
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Causes of Carryover |
次年度には、食道扁平上皮癌細胞株に対するファルネシル転換酵素阻害薬による抗腫瘍効果についてヌードマウスを用いたin vivo実験および臨床サンプルにおける検証実験を予定しているため、相当量のファルネシル転換酵素阻害薬や外注検査が必要となる。以上が次年度使用額が生じた理由である。
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