2022 Fiscal Year Research-status Report
D I Cにおける炎症と凝固の相互作用と血管作動性物質の制御
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22K09136
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
朝倉 英策 金沢大学, 附属病院, 准教授 (60192936)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 播種性血管内凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
DICの本態は、著しい凝固活性化と微小血栓多発であり、進行すると不可逆的な臓器障害や出血症状をきたす。DICモデルを用いた我々の検討では、充分な抗凝固療法を行っても、特に炎症の強い病態では微小循環障害や内皮障害に起因する臓器障害を伴うDICの進展は不可逆的であり、凝固活性化以外の要素が病態に深く関与していると考えられる。血管作動性物質は、DICの循環動態に影響を与える可能性が高いが、その意義を一部解明した。これまでの検討から、LPS誘発DICモデルと組織因子誘発DICモデルでは、多くの相違点を有している。DICモデルでの検討を行う際には、DICモデルの病型を意識した検討が必須である。 2021年度までに、線溶抑制型DICモデルに対してtPAを投与して病態への影響を検討し、tPAは有効かつ安全な治療方法になりうる可能性を指摘した(Thromb Res,2021)。2022年度は更に検討を進めて、同じ用量であっても、投与時間を長くすることによって効果は有意に向上し、出血の副作用(我々おの考案した尿中Hb法で評価)も少なくなることを明らかにした(投稿準備中)。 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、血小板数が低下することや臓器障害の合併、凝固線溶マーカーの変動の特徴などでDICと類似点が多い。そのために、臨床の現場では両者間の誤診が少なくなかったと推測される。我々は、凝固第XIII因子とハプトグロビンを組み合わせることで、的確に鑑別が可能となることを究明した(Res Pract Thromb Haemost, 2023)。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、特異な凝固線溶異常をきたす。具体的には線溶抑制型DICから線溶亢進型DICに、急激に変貌することがあることを発見した。2022年度は3学会のシンポジウムなどで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DICの病型分類は、DICの病態解析、診断、治療法の開発などDIC研究の根幹に関わる極めて重要な概念である。線溶亢進型DIC(組織因子誘発モデルに類似した病態)、線溶抑制型DIC(LPS誘発モデルに類似した病態)といったDICの病型分類は我々が世界で最初に提唱した考え方であるが、国際的に共有された概念とまでは言い難かった。我々は、数々の論文および学会発表を通して、DICの病態の多様性について報告を行ってきた。 また、LPS誘発モデルに対してtPAが有効であることを発見した。しかも、出血症状が全く見られない用量や投与方法も明らかにした。本年度は、血栓止血学的分子マーカー、炎症性サイトカイン、病理学的所見、出血症状などの観点から、同じ用量であってもtPAを長時間かけて投与するのが、有意に有効かつ安全であることを明らかにした。 TTPは、臨床症状や検査所見からDICと類似点が多く、臨床の現場では両者の鑑別が困難なことが多い。TTPではハプトグロビンが著減することは良く知られているが、不思議なことにDICにおけるハプトグロビンの変動を検討した報告が世界的に皆無であった。一方、DICにおいて第XIII因子が低下することは知られているが、TTPにおける第XIII因子の変動を検討した報告はこれまで皆無であった。我々は、ハプトグロビンと第XIII因子を組み合わせることで、両疾患の的確な鑑別が可能になることを世界で初めて明らかにした。 COVID-19における凝固線溶異常(DIC)は、他の疾患に合併したDICと比較して差異があることを究明してきた。複数の学会シンポジウムで発表して、議論を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
DICモデルの作成:ラットを使用し、DIC惹起物質であるLPSまたは組織因子を尾静脈より持続点滴し、DICモデルを作成する。DIC惹起 物質投与前、投与中、投与後における血小板数、フィブリノゲン、PT、D-ダイマー、AT、TAT、PAIによりDICの 発症、病型(線溶抑制型DICまたは線溶亢進型DICのモデルであるか)を確認する。 LPS誘発DICモデルとTF誘発DICモデルの病態比較検討:両DICモデルにおいて、凝固線溶動態のみでなく、血管作動性物質(エンドセリンETおよび一酸化窒素NO)の動態観察、ETおよびNOの発現臓器を同定することにより両DICモデルにおける血管作動性物質のDIC病態へ の関与・役割を考察する。 DICにおけるNO産生に関与するNOSアイソザイムの同定:両DICモデルの臓器におけるiNOS-mRNA、eNOS-mRNAの発現程度を評価することにより、NO産生に関与するNOSアイソザイムを同定する。我々の予備実験により、LPS誘発DICモデルと組織因子誘発DICモデルのいずれにおいても血中NOXは著増するが、LPS誘発DICモデルではiNOS-mRNA発現が著増しているのに対し、組織因子誘発DICモデルではiNOS-mRNAの発現はなく、他のNOSアイソザイムがNO産生に関与しているらしいことを観察中であるが、アイソザイムの同定には至っていない 。 各種NOSインヒビター投与によるNO産生への影響:両DICモデルに対するアイソザイム特異的NOSインヒビターの投与に伴うNO産生への影響を観察することにより、NO産生に関与するNOSアイソザイムを確認可能である。また、特異的NOSインヒビターの投与に伴う、凝固 線溶病態、微小血栓形成、臓器障害、血行動態への影響を評価することにより、両DICモデルにおけるNOの役割を明らかにする。
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[Journal Article] The efficacy and safety of caplacizumab in Japanese patients with immune-mediated thrombotic thrombocytopenic purpura: an open-label phase 2/3 study.2023
Author(s)
Miyakawa Y, Imada K, Ichikawa S, Uchiyama H, Ueda Y, Yonezawa A, Fujitani S, Ogawa Y, Matsushita T, Asakura H, Nishio K, Suzuki K, Hashimoto Y, Murakami H, Tahara S, Tanaka T, Matsumoto M
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Journal Title
Int J Hematol
Volume: 117(3)
Pages: 366-377
DOI
Peer Reviewed
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