2023 Fiscal Year Research-status Report
定量的MRIによる神経膠腫の分子診断と可視化技術の開発
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22K09200
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
木下 学 旭川医科大学, 医学部, 教授 (40448064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 英之 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 脳神経外科 部長 (60570570)
金村 米博 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 機関長・部門長クラス (80344175)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
神経膠腫は脳実質に発生する悪性腫瘍であり、その中には悪性度が異なる様々な病態が含まれる。例えば膠芽腫は2年生存率が20%程度しか見込むことができないが、星細胞腫や乏突起膠腫は10年生存率が80%を超える。最近10年間に神経膠腫の分子遺伝学的診断の重要性が急速に明らかとなり、2016年のWHO診断改訂で病理診断に加えて分子遺伝学的診断を行うことがはじめて推奨された。具体的にはIDH変異ならびに1p/19q染色体共欠失を伴う腫瘍・IDH変異のみを伴う腫瘍・IDH野生型腫瘍の3群に神経膠腫は分類され、その順に予後が良好である。現行の医療技術ではこれから治療に入る患者の予後ならびに提供すべき治療の目的と方法を決定的に左右する腫瘍の分子遺伝学的診断を手術前に得ることはできず、さらに、腫瘍組織の脳内への広がりの概要をMRI画像で正確に同定することもできない。本研究ではこれらの問題を研究代表者の「定量的MRI」というMRI画像技術に関する知識を中心において解決できることが示唆された。 定量的MRI(quantitative MRI: qMRI)は、撮影組織のT1・T2緩和時間の絶対定量値を測定することができる新規のMRI撮像技術であるが、一般臨床現場ではまだ実用化されていない。本研究でRadiomicsとqMRIを組み合わせた臨床応用可能な神経膠腫の分子遺伝学的診断技術の開発に成功した(研究成果①)。 次に、qMRIから得られる組織のT1並びにT2緩和時間を腫瘍細胞密度に換算する独自アルゴリズムを開発することで、神経膠腫そして脳腫瘍全般の脳浸潤部位を3次元的に精緻に可視化することもできた(研究成果②)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究申請で研究目的として定めた2つの目標を順調に達成しつつあり、研究はおおむね順調、あるいは当初の計画よりも順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度である2024年度は当初の計画通り以下の2つの科学的問題を解く。 1. qMRIによるRadiomics解析 研究代表者はこれまでの予備的な検討からqMRIが提供する定量的MR値が神経膠腫の分子遺伝学的特性と相関することを見出し、qMRIが提供する腫瘍のT1・T2緩和時間と神経膠腫のIDH変異と1p/19q染色体共欠失の状態が良好に相関することを示している。Radiomics解析は提案者が低悪性度脳腫瘍のRadiomics解析を目的としてすでに開発を終了しているMatlab言語で作成されたシステムを改良する形で進める。同システムは手動的に抽出された脳腫瘍存在部位から自動的に500程度の画像特徴量抽出を行うシステムであり、画像解析システムとしての独自性が担保されつつ、その堅牢性が確認されているものである。 2. qMRIによる神経膠腫の浸潤部可視化技術開発 定位的に採取された腫瘍検体とqMRIで得られる画像パラメーターについて解析を行い、11C-methionine PETと同等の制度で神経膠腫の脳内浸潤を可視化する技術を開発する。この可視化技術には上記の分子診断技術の開発同様に、Radiomicsによる機械学習技術を導入する。
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Causes of Carryover |
2023年度は主にアルゴリズム開発が主たる研究内容となったが、2024年度は2023年度に開発したアルゴリズムの外部検証が必要となるため、その研究費用を2023年度から2024年度に使用するように変更する。
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Research Products
(9 results)