2022 Fiscal Year Research-status Report
Understanding fundamental masticatory function by evaluation of physiological and food science approaches
Project/Area Number |
22K10073
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小野 和宏 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40224266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
伊藤 加代子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (80401735)
真柄 仁 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90452060)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歯科 / 咀嚼 / 嚥下 / 食塊 / 顎運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:要介護高齢者患者に提供される食事はミキサー,ペースト食などの噛まずに食せるものが飲み込みやすく安全であると信じられており,これは必ずしも患者の食思を向上させるものではない.これまでに申請者らは,咀嚼能力が十分に発揮できれば,低下した嚥下運動をも補完することが可能であることを見出している.本研究では,摂食嚥下障害者の食のQOLの維持に必要となるキーワードを「食認知」と「咀嚼」と捉え,健常者の生理学的検証ならびに要介護高齢者を対象とした横断的・縦断的なアプローチによって,咀嚼食品摂取の可否を決める生体および食品物性条件とは何かを再考し,咀嚼がもたらす嚥下への効果や,介護食のあり方への新たな提言につなげる. 実施計画:本年度は健常者を対象として,表面筋電図ならびに内視鏡画像システムを用いて,種々の固形食品咀嚼時の生体運動記録および経時的な食塊物性・水分値の変化を追うとともに,高齢者の特徴である口腔乾燥,すなわち唾液分泌低下がもたらす運動機能,食隗物性の変化への影響を調べた.対象は米菓,魚肉練り製品,パンとしてアトロピン(ムスカリン性コリン受容体拮抗薬)投与前後で,左右咬筋ならびに舌骨上下筋群表面筋電図を記録,嚥下同定のために内視鏡画像を記録した. 結果:いずれの食品においても,食品の水分値の違いが口腔乾燥への影響に関与しており,咀嚼関連機能のうち,ことに咀嚼後半における舌骨上筋群活動量や活動時間を大きく増加させた.さらに,食品に含まれる油分は口腔乾燥の影響を軽減する因子となり得ること,それは食塊物性への影響のみならず,口腔内の潤滑度の保持(食塊の水分吸収の抑制)にかかわるものと期待された.また魚肉練り製品のように一塊の食塊となりにくい食品では口腔乾燥の影響を受けにくいことも示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米菓(油分と味付けの異なるNon-oil,Oil,Happy,硬さの低いHaihain)を用いた実験では,Happyを除く米菓はアトロピン投与により咀嚼時間が増加したが咬筋活動に有意な変化は認められなかった.1咀嚼サイクル時間はアトロピン投与によりHaihainのみが有意に増加した.舌骨上筋群活動量は食品間で大きな違いはなく,いずれもアトロピン投与により有意に増加した.ことにNon-oilとHaihainで咀嚼中期から後期にかけての舌骨上筋群活動の増加が有意となり,1咀嚼サイクル時間の増加との間には有意な正の相関が認められた.唾液分泌低下はことに舌骨上筋群による食塊形成に影響をもたらし,その影響は油分を含まない(吸水率の高い)米菓で顕著であることが示唆された.パン(硬さと水分の異なるパン,カットパンおよびマーガリンの有無)を用いた実験では,カットパン及びカットパン+マーガリンのみで,咀嚼時間は延長し,咀嚼回数は増加した.加えてカットパンでは咀嚼速度の有意な低下を認めた.咀嚼時筋活動は,カットパンでは,内服後に咀嚼中期の1咀嚼サイクル時間に有意な延長を認めたが,他の食品では影響が認められなかった.マーガリン添加は,内服前の筋活動に影響を与えなかったが,内服後では咀嚼中期の咀嚼サイクル時間が有意に短縮し,舌骨上筋活動量は減少した.いずれの食品も咀嚼の進行と共に,食塊水分量は上昇したが,内服後は嚥下直前の食塊水分量が内服前に比し,減少する傾向であった.唾液分泌低下は,特に水分含有量の少ないパンで咀嚼・食塊形成時の負荷を増加させるが,マーガリン添加は補償効果をもたらす可能性が示唆された.カマボコを用いた実験では,主観・客観データともにカマボコは唾液分泌低下の影響を受けにくいことを確認できた.内視鏡画像上,ばらばらの食塊が咽頭に流れる物性を有する食品は唾液分泌低下の有無に影響しないことが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
唾液分泌の影響は,舌骨上筋群に現れること,ことに咀嚼後半の食塊形成時期にもたらされること,またその要因としては食塊物性の違いもさることながら口腔内の湿潤性もまた重要であることが示唆された. 今後は,(1)行動への影響をさらに詳細に追及するために3次元顎運動記録や舌運動記録を加えること,(2)口腔乾燥が懸念される高齢者を対象とした記録を行うことを予定している.
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Causes of Carryover |
コロナにより学会の参加が見送られた. 施設調査のための出張費や消耗品の使用がなかった. 3次元運動解析のための消耗品使用がなかった.
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Research Products
(6 results)