2022 Fiscal Year Research-status Report
全身疾患との関連性が高いう蝕病原性細菌の定着環境の解明と定着予防法の追究
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22K10268
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大継 將寿 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (40803086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲野 和彦 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (00379083)
野村 良太 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (90437385)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミュータンスレンサ球菌 / 感染性心内膜炎 / コラーゲン結合タンパク質 / 定着メカニズム / 口腔内細菌数 |
Outline of Annual Research Achievements |
齲蝕病原性細菌であるミュータンスレンサ球菌のうち、菌体表層にコラーゲン結合タンパクを発現しているCBP陽性株は感染性心内膜炎の病原性に関与するとともに、脳内微小出血や IgA 腎症などの全身疾患を有する患者の口腔検体から高頻度で検出されることが複数の臨床疫学研究から明らかになっている。ミュータンスレンサ球菌は通常、養育者と子の間で伝播する傾向が強いとされているが、全身への病原性が高いとされるCBP陽性株の定着環境についてはこれまでに検討されていなかった。 前研究課題から本研究課題にわたり、CBP陽性株は通常のミュータンスレンサ球菌と同様に母子伝播の傾向が強いこと、CBP陽性株を保有する小児は母乳育児期間が短く、母乳摂取経験がない小児も多いことが明らかになり、母親は小児へのCBP陽性株の主要な感染源であるとともに、乳幼児期の授乳習慣がCBP陽性株の口腔内の定着に影響を及ぼす因子である可能性を示すことができた。 小児におけるCBP陽性株の定着環境のさらなる解明のため、小児における口腔内細菌数の分析およびCBP陽性株に対する母乳中含有成分の効果の検証を進めている。口腔内細菌数の分析では、大阪大学歯学部附属病院小児歯科を受診した小児を対象に、舌表面に付着する口腔内細菌数と唾液中ミュータンスレンサ球菌数の相関分析や、菌数の多い小児の特徴を分析している。CBP陽性株に対する母乳中含有成分の効果の分析では、10mg/mgのリゾチーム下にてミュータンスレンサ球菌は死菌となる一方で、CBP陽性株ではコラーゲン結合能が消失しないことが明らかになった。今後は、CBP陽性株に対する母乳中濃度でのリゾチームの効果、ラクトフェリンの効果、およびリゾチームとラクトフェリンの両方の存在下での効果について分析を進めるとともに、CBP陽性株の口腔粘膜への定着に母乳中抗菌成分が影響を及ぼすかどうかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つは、全身疾患との関連性が高いう蝕病原性細菌の乳幼児期における定着環境の解明と定着予防法を検討することであった。現在までに、乳幼児期の授乳習慣がCBP陽性株の口腔内の定着に影響を及ぼす因子である可能性を示すことができ、国際学術誌への掲載に至っている。また、本研究の背景の根底にある乳幼児期の齲蝕の実態についても、1つの中核市において1歳6か月児および3歳6か月児における齲蝕の罹患率およびリスクファクターを明らかにするとともに、1歳6か月時までの口腔環境および生活習慣が長期的に齲蝕リスクに影響を与えることを明らかにした。その上で、小児における口腔内細菌数の分析を開始しており、母乳中含有成分の効果の分析ではリゾチームのCBP陽性株に対する特性を明らかにするとともに、ラクトフェリンを用いた分析に着手できていることから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔内細菌数の分析では、まずは現状の臨床研究においてを継続し、小児において舌表面に付着する口腔内細菌数は唾液中ミュータンスレンサ球菌数に依存するかどうかを検討する。また、舌表面に付着する口腔内細菌数が多い小児の生活習慣の特徴や身体的特徴を明らかにする。さらに検出されたミュータンスレンサ球菌の分子生物学的分析を行い、CBP陽性株保有児の特徴を明らかにする。 CBP陽性株に対する母乳中含有成分の効果の分析では、まずはミュータンスレンサ球菌に対するリゾチームおよびラクトフェリンの抗菌効果、増殖抑制効果、およびバイオフィルム抑制効果の分析を行う。さらに、リゾチームおよびラクトフェリンにて処理されたミュータンスレンサ球菌の構造変化を電子顕微鏡にて観察するするとともに、CBP陽性株のコラーゲン結合能の分析を行うことでリゾチームおよびラクトフェリンがCBP陽性株のコラーゲン結合能へ与える影響について明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)研究結果の一部をまとめた学術論文は国際学術誌への掲載に至っており、次なる臨床実験および分子生物学的実験系の確立という点では当初予定していた以上に進行している。一方で、分子生物学的分析ではリゾチームの有するCBP陽性株への効果が想定以上に弱く、結果の確認のための再分析が必要となり計画よりも進んでいない。これらのことが、次年度使用額が生じる原因となっている。 (使用計画)次年度の使用額は、ラクトフェリンを用いた分子生物学的分析を継続するとともに電子顕微鏡による分析などに充て、全て執行する予定である。
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Research Products
(3 results)