2023 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後の日常生活動作の障害に関連する予後規定因子の解明
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22K10386
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入江 芙美 九州大学, 医学研究院, 助教 (30930747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 龍 九州大学, 医学研究院, 教授 (60744589)
北園 孝成 九州大学, 医学研究院, 教授 (70284487)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳卒中 / 予後 / Stroke / ADL / Prognosis / Predictor |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国において、脳卒中は介護が必要となった原因疾病の第2位であり、高齢化の進展に伴って今後さらに脳卒中患者数が増加することが見込まれる中、脳卒中後の日常生活動作(ADL)の障害が大きな課題となっている。 そこで我々は、急性期脳卒中患者を対象とした大規模縦断的疾患コホート研究である「Fukuoka Stroke Registry:FSR」のデータベースを活用し、脳卒中発症後のADLの障害に関連する予後規定因子を解明することを目指して、研究を進めている。 具体的には、脳卒中患者の発症5年後までの予後を追跡し、ADLの状況についてmodified Rankin Scale (mRS)スコアで評価した。また、発症前の状況、入院時の臨床所見・検査結果、入院中の急性期治療の内容といった、機能予後に関連すると考えられる項目について、欠損値や異常値を確認し、データクリーニングを行った。さらに、構築したデータセットを用いて解析を行い、年齢や性別といった基本的患者属性が、独立して長期機能予後不良(mRSスコア高値)に関連していることを見出した。特に、高齢の女性で機能予後が不良であることが示唆されている。そのため、今後は、高齢女性の長期機能予後が不良となる要因について解析を行い、機能低下を予防するためのターゲットポイントについての提言につなげたいと考えている。 加えて、機械学習手法を用いた、長期機能予後に関連する因子の網羅的探索を行っており、今後は、網羅的探索によって見出された因子が、機能予後予測モデルの予測精度向上にどの程度寄与しているのかについて、詳細な検討を行う予定である。特に、入院時の神経学的所見や血液・尿検査結果など、FSRのデータベースに収載されている精緻な臨床情報を駆使することで、機能予後を規定する因子について新たな知見を得ることができるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、令和4年度及び5年度は、急性期脳卒中患者を対象とした大規模縦断的疾患コホート研究である「Fukuoka Stroke Registry:FSR」に登録されている患者について、発症後毎年の予後に関するデータを収集した。予後に関しては、死亡、脳卒中再発といった情報に加えて、機能予後評価のためにmodified Rankin Scale (mRS)スコアを記録している。また、FSRデータベースに収載されている発症前のADLの状況、既往歴/合併症、入院時の臨床所見/血液・尿検査結果、入院中の臨床所見の変化、退院時の臨床所見といった各項目に関し、欠損値や異常値についての確認等、データクリーニングを行った。これにより、脳卒中後の長期の機能予後に関する情報と、機能予後に関連すると考えられる予後規定因子の情報とを含んだ、網羅的かつ精緻なデータセットが構築された。 次に、計画に沿って、年齢や性別といった基本的な患者属性が、脳卒中後の機能予後にどのように影響するかについて、線形回帰手法を用いて解析を進めた。これまでの解析により、高齢者及び女性において長期機能予後が悪いことが示唆されている。加えて、尿タンパクや糸球体濾過量といった腎機能の指標と、脳卒中後の再発や死亡といったリスクとの関連を示唆する結果も得られている。 さらに、機械学習手法を用いた解析を行ったところ、入院時血液検査データのうち凝固線溶系や炎症に関連する項目が、高頻度に、予後予測モデルの中に含まれていることが確認された。今後は、これらの項目を入れることで、どれだけ予後予測モデルの精度が向上するのかを吟味していく必要があると考えている。 このように、研究は計画どおりに進んでおり、これまでの二年間で、既に一定の成果を挙げたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、予後追跡調査の結果を追加し、解析に用いるデータセットをより充実させた上で、高齢女性の長期機能予後不良の要因について、より詳細に検討を行っていく。また、Body Mass Index(BMI)や腹囲といった肥満関連指標や、急性期の体温及び血圧変化といった項目についても、予後への影響について検討を深めていく予定である。 加えて、機械学習手法を用いた、長期機能予後不良と関連する因子の網羅的探索を継続する。機械学習手法では、非線形の関係性についても解析することが可能であり、U-shape、L-shapeといった形の用量反応関係も把握できると期待される。機械学習手法によって、入院時の生理学的・神経学的所見や血液・尿検査結果などの臨床情報を網羅的に解析することで、これまでの線形回帰手法では捉えられなかった長期機能予後に関連する因子の解明につながるものと考えている。ただし、機械学習手法により選定された因子については、機能予後に影響するメカニズムがはっきりしていないものもあることから、機能予後予測モデルの精度向上にどの程度、寄与するのかについて吟味し、脳卒中治療の臨床において、その因子がもつ意義について十分に考察する必要がある。 こういった解析・検討を進め、最終的には、脳卒中後のADL低下を予防するためにターゲットとすべきポイントについて提言できればと考えている。
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Causes of Carryover |
2022年度は新型コロナウイルス感染症の流行状況に鑑みて移動を控えた時期があったため、旅費の執行が減少した。また、2022年度は初年度であり、データクリーニングに時間を要する項目については、論文化にまでは至らず、その他の項目で計上していた論文投稿料の執行が減少し、次年度使用額が生じた。2023年度は概ね順調に執行できており、最終年度に繰り越した費用は、解析結果の解釈等について専門家の意見を聴取するための旅費・謝金等に充てることとする。予算の執行時期について若干の変更があったものの、研究計画全体に大きな影響を与えるものではない。
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Research Products
(7 results)