2023 Fiscal Year Research-status Report
日本の医療現場における破壊的行動の解明とエビデンスに基づく予防プログラムの開発
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22K10429
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
藤本 学 立命館大学, 教育開発推進機構, 教授 (00461468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 浩彰 関西医科大学, 医学部, 教授 (30268370)
稲葉 一人 中京大学, 法務研究所, 特任研究員 (80309400)
島村 美香 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 講師 (80782713)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 医療者の破壊的行動 / コンパッション / 看護師の説明スキル / 心理的安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2つの総合病院において4月と8月に医療者の破壊的行動に関する実態調査を実施した。得られたデータを分析し、「医療者の破壊的行動の因子構造の解明」と「破壊的行動が被害者や組織に及ぼす影響」に関する英語論文、および「日本の医療機関における破壊的行動の実態」に関する日本語論文1本を執筆した。前者の英語論文は12月に採択・公開された。他の2本は現在査読プロセスの過程にある。そのうち、英語論文は「対処の防壁効果」と「バックウォーター現象」という興味深い知見を報告するものである。これらの知見は、医療者の破壊的行動を起こさない組織文化の醸成が必要不可欠であることを示している。残る日本語論文における興味深い知見は、医療者の破壊的行動の被害に合いやすい時期は、入って間もない1年以内と、ようやく仕事を覚え独り立ちした3~5年であるということである。 加えて、総説論文も査読プロセスに載っている。医療者の破壊的行動の「属性」「原因」「結果」について列挙したレビュー論文は多数存在するが、それらの因果関係に注目して整理したものはない。そこで、医療者の破壊的行動に関する先行研究で明らかになっている知見を体系化し、英語論文にまとめている。実戦的応用としてトレーニングプログラムを考える際に、このレビューが理論的背景として重要な役割を果たしている。 また、上記とは別の総合病院において看護師の説明スキルに関する調査を実施し、学会のシンポジウムで発表するとともに、英語論文としてまとめて投稿した。現在査読中である。 いずれの研究テーマにおいても、当初意図していなかった「コンパッション」(思いやり)の重要性が浮かび上がった。これを受け、コンパッションを中核とする医療安全研修のプログラムの開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた総合病院に加え、別の総合病院が医療者の破壊的行動の抑止に関する研修とサポートを依頼してきた。研究フィールドが増えたことでより多くのデータを得ることができ、数多くの知見を得ることができた。それらを順次論文にまとめていった結果、年間の論文投稿数が当初の予定の2倍を超える本数となった。 また、医療安全にはコンパッションという心理的要因が重要であるという知見を得られたことをブレイクスルーに、2025年度に予定していたトレーニング開発を前倒しで完成させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の4月末~7月中旬にかけて、5つの総合病院で開発したトレーニングを実施する。8月以降は効果性の検証を行い、順次知見を学会発表や論文として公表していく。
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Causes of Carryover |
研究で得られた知見を英語論文として発表するにあたり、近年オープンアクセス費を要求するジャーナルが一般化している。計画よりも研究が進んでおり、投稿論文数が想定を超えている。現在3本の論文を投稿しており、これらが採択された場合に140万程度の費用が必要になる。これに備え、旅費など当該年度の研究費の使用を見直し、計画的に次年度に繰り越した。
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