2022 Fiscal Year Research-status Report
Functions of the cholangiocarcinoma suppressor gene extracted from printing company workers' samples: From cell cycle regulation to drug discovery
Project/Area Number |
22K10491
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
川村 悦史 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60419710)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 勤 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20628698)
湯川 博 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任教授 (30634646)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 肝内胆管癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、地元の印刷会社で使われた1,2-ジクロロプロパン(DCP=労災認定)による胆管癌発症の事例(2012年)をきっかけに癌遺伝子探索を始めた。2015年度、我々は同印刷会社症例を含む胆管癌の外科的切除腫瘍組織を用いてRNA発現異常の探索を開始した(JSPS科研費No. 15K08716の助成による)。24例の肝胆道系腫瘍(胆管癌10例、対照として肝細胞癌10例、良性胆道腫瘍4例)の検体(組織及び血清)からRNA抽出液を得て、micro RNA(miR)、messenger RNA(mRNA)に対する高感度マイクロアレイ解析を行なった。2016年度、胆管癌と他の腫瘍を区別し得るmiR20種を抽出した。更にweb上の標的データベースにより、癌抑制遺伝子SKI (Sloan-Kettering Instituteが発見したタンパク) mRNAおよびmiR-3648を抽出した。2019年度以降、我々はSKIの機能解析を進め(同No. 19K10604の助成による)、SKI-p21シグナル効果を突き止めた(サイクリン依存性キナーゼ抑制体p21タンパクの発現亢進による胆管癌細胞の増殖抑制)。我々はこの成果を学外に発信し、アジア太平洋肝臓学会APASL oncologyにおいてinvestigator awardを受賞した(2022年9月)。2022年度以降、我々は、更に研究を進め主に2つの実験を併行している(同No.22K10491の助成による)。 1つは、SKIが関わるp21-DNAの転写に介在するタンパクの探索(SKIタンパクの全長から数百のアミノ酸構造ずつ短縮するプラスミドを複数設計し細胞導入の途中)、もう1つは胆管癌モデルマウスの作成(現在、前癌状態まで到達)である。以上、我々は胆管癌の治療標的を発見する為に癌抑制遺伝子の機能解析を続け、着実に成果を得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度以降、我々は3つのJSPS科研費の助成(No. 15K08716、No.19K10604、No.22K10491)により大阪市で報告された職業性胆管癌症例を含む臨床検体を対象として、(1)胆管癌の進行と関わる遺伝子の探索(高感度RNAマイクロアレイによる網羅的解析)、(2)(1)の結果のうち化学物質の代謝酵素と関連するRNAの定量的解析(職業性胆管癌の発症機序の推定)、(3)(1)の結果、抽出された100種類を超えるRNA(microRNAおよびこれが制御するmRNA)に関して、複数の遺伝子webデータベースを使い、胆管癌関連癌遺伝子の選別を行なった。 (1)~(3)により、上記の代謝酵素と関連する遺伝子発現異常は特定されなかった。しかし、上記マイクロアレイと癌遺伝子のwebデータベースを基にヒト胆管癌細胞株による実験を行ない、SKI遺伝子がヒト胆管癌細胞株の増殖を抑制する機能を突き止め、論文発表した。 2019年度以降、SKIとこれを制御する小分子核酸microRNA-3648、SKIとサイクリン依存性キナーゼ抑制因子p21の制御関係について細胞株を使った解析に取り組んできた。2022年度、我々はSKIがp21 DNAの転写とp21タンパクの発現亢進に関わり、G1期で胆管癌の細胞周期を抑制することを突き止め、学外へ発信した。現在、我々は(i)SKIがp21-DNAの転写を促進する際に介在するタンパクの探索、(ii)胆管癌モデルマウスの作成という2つの実験を実施している。
|
Strategy for Future Research Activity |
我々は、2021年度中にSKIがヒト胆管癌細胞の増殖を抑制する事を示す基礎データを得て2022年、学外へ発信した。この抑制は、同遺伝子が細胞周期のブレーキ役であるp21タンパクの発現を亢進すること(定量的なmRNA PCRとwestern blotで検証)、及びSKIタンパクがp21 DNAの転写に関わっていること(レポーターアッセイで検証)、によると考えられた。2023年度以降の方策は、SKI-p21シグナルについて①介在する転写因子の探索、②生体での検証、を続けて本疾患の発癌機序を解明し、治療標的を見出すことである。 実験の計画は次の通りである(上記①②と対応)。①SKIタンパクの全長から数百のアミノ酸構造ずつ短縮するプラスミドを複数設計し細胞導入し、p21発現促進がみられる構造とみられない構造に2分される境界を突き止める。②胆管癌動物モデルを作成する。我々は以前、異種移植モデル(免疫不全マウスにヒト胆管癌細胞株を移植)の作成を試みたが確立できず。2022年度以降、化学発癌モデルマウスの作成に取組んでおり、今後も継続したい。
|
Causes of Carryover |
令和元年度以降、我々は胆管癌抑制遺伝子SKIの機能解析を中心にin vitro実験を行ってきた。同4年度、SKIあるいはsiSKIを導入した胆管癌細胞株において、SKIがG1期で細胞周期にブレーキ役として働き(FACS解析)、そこへのDNA再複製誘導を担うCDT1タンパク発現の関わり(蛍光免疫染色)、及びSKIのp21遺伝子転写への関わり(レポーターアッセイ)を示唆するデータを得た。一方、予定通り進まなかった点もあった。その一因は、研究拠点である大阪市は新型コロナパンデミックの中、代表者らはコロナ診療に携わりながら胆管癌研究遂行に努めた事である。市内のコロナ感染の拡大は国内有数であり、緊急事態宣言とまん延防止策が繰返された。研究時間の短縮や海外から納入する試薬の航空便の遅延もあり、十分に解析ができず次年度使用額が生じた。次年度、我々は①SKI flagplasmidのflag結合タンパクの探索(pull downアッセイ)、②本疾患の血清腫瘍マーカーの探索(microRNAの定量的PCR)、③SKI/p21のmRNA機能を亢進(胆管癌増殖抑制)を導くDNA配列(RNAスポンジ)の合成を行う予定である。次年度使用額は、これらの経費に充てたい。
|
Research Products
(2 results)