Outline of Annual Research Achievements |
今年度は, エントレインメントの詳細な分析を目的とし, 音響的特徴量 (基本周波数とラウドネス) および韻律的特徴量 (発話速度) に焦点を絞り, 高齢者対話における臨床心理士, 介護士, 大学院生の発話におけるエントレインメントについて, 種々の条件(対話行為タグ, 割り込みの有無, 会話中の発話回数)において, 探索的に分析を行った. 結果, 割り込みの有無について, ラウドネスの最大値におけるエントレインメントの違いを統計検定 (p<0.05) により, 臨床心理士, 介護士, 大学院生の全ての場合で確認した. 加えて, その効果量の大きさについて, 介護士が最も大きく, 続いて臨床心理士, 大学院生の順となっていた. 一方, 対話行為タグや会話中の発話回数を用いた分析では, 主に介護士の発話においてのみ, エントレインメントの違いを統計検定 (p<0.05) により確認した. 本研究により, エントレインメントの分析について, 割り込みの有無や発話行為タグといった発話の分類条件は詳細な分析を可能にすることに加え, 臨床心理士や介護士, 大学院生といった違いがエントレインメントの分析の結果に影響することが分かった.エントレインメントを詳細に分析するためには, 従来の言語的及び非言語的特徴量に加え, 発話ごとの分類, 会話相手を含めた会話場面の設定や職業といった話者個人の情報などの利用が有効であると考えられる. また,ソーシャルスキルトレーニングを実施するエージェントを,本研究の知見を土台にアップデートすることを試みた.
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