2022 Fiscal Year Research-status Report
Initiative of Sustainable Transportation Policy for Mobility Innovation by Local Government
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22K12495
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Research Institution | Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism |
Principal Investigator |
南 聡一郎 国土交通省国土交通政策研究所, 主任研究官(任期付) (20781917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 秀忠 山梨学院大学, 経営学部, 教授 (50583267)
竹内 龍介 国土交通省国土交通政策研究所, 主任研究官(任期付) (60896330)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | モビリティ・イノベーション / 持続可能な交通政策 / 地方分権 / 脱炭素 / LRT |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には5月、7月、9月(2回)、10月、12月、2023年2月、3月に研究会を行い、研究フレームワークの共有、既知の情報の整理、研究仮説の設定、調査先の選定と調査項目の確定などを行った。本年度は、1)地方自治体の交通政策が企業の技術開発に与える影響に関する分析、2)欧州における先進事例の調査、3)モビリティ・イノベーションと持続可能な地域交通政策の展望に関する分析の3つの調査分析のうち、主に1についての分析をおこなった。ここでは、日本を含む各国のモビリティ・イノベーションをうけた交通関連の法改正や地方交通政策の動向、開発メーカーや交通事業者の動向を分析し、2の先進事例調査や3の展望をしめす基礎的な知見を構築した。 また、研究を進める中で、各国の交通政策の発展史の分析が不可欠であるということが判明した。そこで、日本の民営の公共交通を中心とした交通政策の発展とその限界点について分析するともに、交通部門の環境政策として欧州で実施されている自動車から公共交通へ転換策の実施可能性についても分析を行った。欧州は日本とは異なり、地方自治体が公共交通の維持・再生並びに抜本的改良・拡充を行うために必要な財源を有しており、地方自治体主導によるLRTやBRT導入が脱炭素のためのイノベーションを促している点について、地方交通行政に関する政策の発展史としての分析を行った。営利企業単独では推進が困難な状況を打破するために公的部門、特に地域の環境問題の解決に責任を持つ地方自治体による積極的な関わりが有効である、という仮説である。 ここで構築された仮説に基づき、2023年度にはフランスで1980年代後半に誕生し、2010年代にかけて広範に普及した超低床LRTにおける技術的、制度的、認知的な変化を描写する為の調査を推進していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19による海外渡航制限があったことにより、海外現地調査を実施することは出来なかった。また、国内実地調査についても実施する事は出来なかった。一方で、研究メンバーによる研究会並びに定常的なコミュニケーションを通じて研究枠組みの共有と仮説の構築、調査先の選定と調査内容の確立を推進出来た。また、研究枠組み構築の中で明らかになった発見や仮説について、国内、海外の学会にて発表を行った。加えて、2022年12月から翌1月にかけてフランスから日本を訪問した研究者(フランス国立社会科学高等研究院日仏財団のAlexandre Faure博士)とのワークショップを開催して現地での研究動向、フランスの公共交通イノベーションにおける公的部門の果たしている役割と方向性についての議論を行ったり、論文の執筆・編集を共同で行った。ここでの議論からは、フランス国内でもパリを中心とした首都圏と、地方では先進的な公共交通イノベーションに対する公的部門によるアプローチに差があること、一方でモータリゼーションから公共交通主体のモビリティを模索する方向性については共有されていることが明らかになった。特にパリ市内には、先進的なモビリティ・イノベーションを推進するための政策的取り組みのアプローチが存在し、積極的な社会実験を推進しつつ、問題が明らかになったら規制を実施する、という方針となっていることが確認された。また、フランス国立社会科学高等研究院日仏財団の協力のもと、現地調査やフランスでのワークショップ実施への調整が進んだ。これまでの進捗を基盤として、2023年度の現地調査を推進していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、地方自治体の持続可能な交通政策とモビリティ・イノベーションに関する相互依存的な発展サイクルの典型例として、フランスにおけるLRT普及の経緯とそれに伴う技術的、制度的、認知的障壁の解消プロセスを観察して分析するための現地調査を2回計画している。第1回は2023年6月下旬に、パリ、リヨン、グルノーブル、モンペリエにおいて視察、現地研究者との議論、現地関係者への聞き取り調査を約1週間かけて実施する予定である。 第2回は2023年11月下旬に、同じくフランス国内での現地調査・研究者との議論を実施する。こちらについては6月に実施予定の第1回現地調査の結果を受けて調査先を選定する事としている。さらに、現地調査の準備並びに分析、出版に向けた整理と執筆、学会発表を推進するための研究会を概ね月1回のペースで実施する。これらの取り組みを通じて研究の進捗を着実なものとする計画である。これらの調査結果をもとに、学会発表を行い研究成果のブラッシュアップを進める。研究最終年度となる2024年度には追加的な現地調査とワークショップをフランス並びに日本国内で実施する計画である。COVID-19の再流行や地政学的リスクにより海外渡航に支障が生じる際には、これまでに気づいてきた研究上の協力関係を活用して、オンラインでのワークショップや現地研究協力者を通じた調査によって研究を推進する計画である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が特に旅費の費目で多く発生した原因は、COVID-19による渡航制限とロシア・ウクライナ状勢の不安定化による日本・欧州間の航空運賃高騰である。これらの要因によって、2022年度内のフランス現地調査実施は費用対効果が小さくなる懸念が発生したため、2022年度は国内で実施可能な資料・情報収集や、調査先選定、仮説構築といった方面に研究リソースと投入するという判断を行った。このような状況下ではあったが、海外研究協力機関であるFFJ-EHESSからの研究者が日本を訪問した際にワークショップを行い現地の最新動向を知るとともに、調査設計の推進や調査先への渡りをつける事が出来た。 2023年度には、この次年度使用額と同年度分として請求した助成金を合わせることで高騰する航空運賃に対応した現地調査費用を確保し、2022年度に実施した国内での検討・調査準備の成果を活用した形での現地調査を積極的に推進する計画である。こちらについても2023年度の現地調査実施により執行を進める計画である。
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