2022 Fiscal Year Research-status Report
The Impact of Expanding Employment of Foreign Workers on Agriculture : A Comparative Study on the Sustainability of Rural Communities in Japan and Korea
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22K12517
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
深川 博史 東海大学, 文理融合学部, 教授 (30199153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 敦子 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10647358)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 日韓農業 / 外国人雇用 / 農村社会 / 持続可能性 / インパクト |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、本研究に関わる編著書を研究分担者とともに刊行した。その過程で統計データの収集と分析をある程度終え、実態調査に早期に取りかかることができた。統計データについては、日本の技能実習制度の廃止検討など政策の動きが急であることから、2年目以降も収集と分析を進める予定である。 実態調査は、日本の宮崎県の複数の農業法人においてヒアリング調査を行い、雇用した外国人の周年労働を実現する過程で、栽培作物の種類を増やし、農地利用率を向上させていることを確認した。外国人の雇用は従来、労働力の不足という観点から論じられがちであったが、外国人の就労機会拡大のために農閑期の作付けを増やすことで、結果的に、農地の利用率が向上していた。これは、外国人雇用が、農村社会の存続にインパクトを与える可能性を示唆するものであった。 韓国では、京畿道の農業法人、農産物流通法人において、ヒアリング調査を行った。農産物流通法人では契約栽培農家からサツマイモなどの野菜を仕入れており、タイ人を複数雇用していた。流通法人であるため季節的な雇用需要の差異は大きくないが、継続的に外国人を長期雇用するために賃金以外の諸条件を工夫していた。賃金水準の引き上げは、周囲の農業法人への配慮もあり難しく、住宅の無償貸与や、その他様々な福利厚生等の充実により、タイ人の長期雇用を実現していた。農村社会の外国人雇用への依存が深化するにつれて、長期雇用が課題となる可能性が高い。今後は、同法人に関わる契約栽培農家へのヒアリングを通じて雇用方法を検討するとともに、長期就労に関わる外国人労働者の経済状況について、送出国の背景事情も含め調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究テーマに関わる編著書を刊行することができた。研究分担者とともに、これまで取り組んできた、研究調査の成果をまとめたものであり、本プロジェクト推進上の課題をいくつか提示することができた。 これまでの研究では、日韓農業ともに外国人受入れには、農村における周年労働機会の確保が課題であることが明らかとなった。日韓は、それぞれの地理的条件の中で、異なる工夫をすることで、安定雇用に方向性を見出しており、それが農村社会の存続に一定程度寄与する可能性を示したことは、今年度の成果であった。それらの成果の一部については、東アジア学会で報告を行い参加者から貴重なコメントを得ることができた。 今後は、周年雇用に向けた工夫の方策について、個々の農家や農業法人等からヒアリングを続け、外国人雇用の、農村社会への影響について検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目以降は調査地を増やす予定である。第2年度はとくに、韓国農村において、外国人の安定雇用に関わる方策について、更なる研究調査を進める計画である。初年度と同じく、京畿道の都市近郊農村において契約栽培農家等のヒアリングにより、外国人雇用の長期雇用の方策内容及び、雇用安定化が、農村社会存続へもたらすインパクトについて検討する予定である。併せて、受入国のみならず、送り出し国の調査を通じて、外国人送出の経済背景を調査する計画である。日韓両国における外国人の就労継続は、両国の賃金等の条件のみなならず、送出国の経済状況にも規定されることが、従来の調査を通じて明らかになってきた。それゆえ、就労継続に関わり、送出国での送り出し機関などのヒアリング調査が必要となってきている。
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Causes of Carryover |
研究初年度は、国内調査と韓国調査を行った。国内日本の調査は、一定の成果を上げることができたものの、本務校から距離的に近い九州南部の調査を行ったため旅費を多くは要しなかった。また、韓国については、当初、複数回の科研調査を予定したが、コロナの影響で、複数回の科研調査は実施できなかった。それらの事情から次年度使用が生じた。 第2年度においては、コロナの終息が見込まれていることから、韓国現地調査や送出国調査などに有効使用したいと考えている。
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Remarks |
外国人労働者受入れ関連論文を含む学術誌のリポジトリ公開
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Research Products
(3 results)