2023 Fiscal Year Research-status Report
低温下でのエアロゾルデポジション法(クライオAD法)による新規コーテイングの実現
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22K14518
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
後藤 拓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (10916547)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エアロゾルデポジション法 / 極低温セラミック成膜 / 極低温ポリマー成膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては前年度に引き続き、低温下におけるAD法の開発および低温下における衝撃破砕現象誘起ポリマーの低温硬化・脆化現象を利用した柔軟ポリマー/柔軟部材へのコーティングを行なった。具体的には、ポリマー(ゴム)基板に対し低温下でのセラミック粒子AD成膜を行い、低温硬化により従来成膜が困難なゴム基板上へのアルミナ等の緻密セラミック成膜を実現した。加えて、温度変化にともなう基板弾性率変化に対しAD膜の特徴の一つである結晶子サイズの変化が確認され、従来未解明であった基板硬度に対するAD成膜プロセスウインドウ解明に繋がる知見が得られた。本成果は、柔軟基板への非熱セラミック成膜へと応用可能であり、例えばゴム基板上へのセラミック系センシング素子の成膜などへの応用が期待できる。これらの成果は著名な国際誌であるceramics international誌に掲載された。 またADプロセスウインドウ解明のために、各種ポリマー並びに各種セラミック粒子を用いて温度(ポリマー基板/粒子弾性率)を連続的に変化させて成膜を行うことでプロセスウインドウを決定しようとしており、現在基板温度(基板硬度)・粒子温度(粒子硬度)の二つを変化させるための実験系を構築中である。 以上のように連続的温度変化によるポリマー粒子の可逆的硬度・靭性変化を利用した柔軟ポリマー/柔軟部材へのコーティング、ならびにAD法のプロセスウインドウを解明のための成果およびポリマーセラミックハイブリットコーティングに繋がる知見が得られており、十分な進展が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、低温硬化・脆化現象を利用した柔軟ポリマー/柔軟ポリマー部材へのコーティングを実施し、ポリマー(ゴム)基板に対し低温下でのセラミック粒子AD成膜を行い、低温硬化により従来成膜が困難なゴム基板上へのアルミナ等の緻密セラミック成膜を実現し、基板硬度に対する粒子衝撃破砕の閾値といったAD成膜プロセスウインドウ解明に繋がる知見が得られた。本成果は、目的の一つであるポリマー・セラミックハイブリッド成膜におけるポリマー・セラミック粒子の組み合わせを決定することにも繋がる。 以上のように連続的温度変化によるポリマー粒子の可逆的硬度・靭性変化を利用した柔軟ポリマー/柔軟部材へのコーティング、ならびにAD法のプロセスウインドウを解明のための成果ならびにポリマー・セラミックハイブリットコーティングに繋がる知見が得られており、加えて本成果の一部はすでにQ1国際誌に採択されており順調な進展が得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、各種ポリマー並びに各種セラミック粒子を用いて温度(ポリマー基板/粒子弾性率)を連続的に変化させて成膜を行うことでプロセスウインドウを決定ならびにポリマー粒子・セラミック粒子の低温場におけるハイブリットコーティングを実施し、狙ったナノコンポジット構造を有する新規ハイブリットコーティングの実現を目指す。 またADプロセスウインドウ解明のために、各種ポリマー並びに各種セラミック粒子を用いて温度(ポリマー基板/粒子弾性率)を連続的に変化させて成膜を行うことで粒子硬度・基板硬度といった現在未解明であるパラメーター変化からのAD成膜プロセスウインドウを決定する。 また上記の研究の進捗状況にもよるが、大気下といった取り回しが容易な環境下において低温下での超音波等を援用させたメカノケミカル反応によるコーティングにもトライすることを想定している。 以上を通じ、低温メカノケミカル成膜といった新規反応場を実験的に明らかにしていくとともに、成果を世界に先駆けて配信していく計画である。
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Causes of Carryover |
当初粒子冷却系のために投げ込み式ハンディークーラーを予算に計上していたが、前年度に設計した液体窒素冷却による粒子冷却系で目的の温度まで下げることが可能となったため、購入を控え、その結果差額が発生した。発生した差額は、超音波援用による低温コーティングの実験系構築に使用することを予定している。
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