2023 Fiscal Year Annual Research Report
ピッカリングエマルションが可能にする動的速度論的光学分割の新戦略
Project/Area Number |
22K14681
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鹿又 喬平 大阪大学, 大学院薬学研究科, 助教 (30880447)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ピッカリングエマルション / 動的速度論的光学分割 / 光学活性化合物 / リパーゼ / アルコール / エステル / Pickeringエマルション |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の触媒が同一系内で機能する多成分触媒反応は、単独の触媒では成し得ない高度な化学変換を可能にする。しかし同一系内で共存可能な触媒の組み合わせは限定的である。動的速度論的光学分割は、一方のエナンチオマーの選択的な変換と、原料のラセミ化を同一系内で同時進行させる手法である。本手法は、ラセミ体を単一エナンチオマーへと収束させる優れた手法であるが、2つの反応の触媒を同一系内で共存させることが問題となっている。本研究では、リパーゼを光学分割触媒、硫酸をラセミ化触媒に用いて、本来は共存し得ない両者をピッカリングエマルションを反応場として同一系内で用いるアルコールの動的速度論的光学分割を達成した。ナノ粒子がエマルション液滴を被覆する反応場の区画化は、本来は共存し得ない触媒の協働に加えて、有機相では深刻な問題となる副反応が水相で完全に抑制させるといった、高度な反応制御も可能とした。本手法では、硫酸濃度を基質ごとにチューニングしてラセミ化速度を調節することで、幅広いラセミ体アルコールについて高収率・高光学純度で対応するエステルを得ることに成功した。また、動的速度論的光学分割による光学活性体の合成が極めて難しいとされる第三級アルコールについても、本手法は適用可能であった。第三級アルコールは、ルテニウム錯体など従来のレドックス反応に基づくラセミ化触媒の適用は不可能であり、ピッカリングエマルションを用いる本手法の有用性を示す結果である。
|