2022 Fiscal Year Research-status Report
食餌による腸管粘膜免疫調節における遺伝子サイレンシングの役割
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22K14840
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
逢坂 文那 北海道大学, 農学研究院, 助教 (90908485)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | microRNA / 腸管免疫 / 腸内細菌叢 / リンパ球 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「食餌による腸管粘膜免疫調節にmicroRNAによる遺伝子サイレンシングが寄与するのか」という仮説を立て、以下のように検証を進めた。 1) 高脂肪食の摂取により、マウス大腸粘膜固有層における制御性T細胞の割合が減少するという知見に基づき、マウスに高脂肪食を2週間ないしは4週間摂取させた時の大腸粘膜固有層白血球におけるmiRNAの発現レベルをマイクロアレイにより網羅的に解析した。その結果、高脂肪食摂取が大腸粘膜固有層白血球のmiR-20a-5pの発現を増加させることを明らかにした。また、in silico解析によりmiR-20a-5pは制御性T細胞のマーカー遺伝子であるNr4a3を標的とすることが予測され、実際に高脂肪食摂取によりNr4a3およびFoxp3のmRNAレベルが低下することを明らかにした。 2) 高脂肪食摂取による大腸粘膜固有層白血球のmiR-20a-5pの発現増加に腸内細菌が関与しているかどうかをマウスへの抗生剤投与により確かめた。予想に反して、抗生剤投与によりmiR-20a-5pの発現レベルは高値を示した。このことは、高脂肪食摂取によるmiR-20a-5pの発現増加およびNr4a3のmRNAレベルの減少に、腸内細菌叢が関与しないことを示唆している。しかしながら、抗生剤投与による腸内細菌の減少レベルはコントロールに比べて1/100程度であり、高脂肪食摂取による大腸LPLにおけるmiRNAの発現増加やNr4a3のmRNAレベルの減少に対する腸内細菌叢の影響をキャンセルするには十分でなかった可能性があるため、無菌マウスを用いたさらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の目的として、1) 難消化性オリゴ糖によって増加するmiRNAの標的遺伝子の同定および2)高脂肪食によって増加するmiRNAの標的遺伝子の同定の2点を掲げた。しかしながら、難消化性オリゴ糖あるいは高脂肪食摂取が大腸粘膜固有層白血球におけるmRNAの発現プロファイルの網羅的解析には至らなかった。また、miRNAが直接相互作用する標的遺伝子についても、RNA免疫沈降法によるmiRNA-mRNAの相互作用解析により同定することを目指したが、大腸粘膜固有層白血球およびマウスT細胞のモデルとして使用したEL-4細胞におけるRNA誘導サイレンシング複合体を形成する遺伝子であるAGO2のタンパク質レベルが低く、さらには大腸粘膜固有層白血球へのmiRNAの遺伝子導入も非常に困難であるため、実現には至らなかった。一方で、高脂肪食摂取による大腸粘膜固有層白血球におけるmiR-20a-5pの発現増加に腸内細菌叢が関与していることを想定し、抗生剤投与試験を行ったが、期待する結果は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は予定よりもやや遅れているが、今年度得られた結果を元に下記の実験を進める。 1) 高脂肪食摂取がマウス大腸粘膜固有層白血球におけるmiR-20a-5pの発現を増加させるメカニズムを明らかにするため、マウスから分離した大腸粘膜固有層CD4陽性細胞あるいはマウスT細胞株であるEL-4細胞に長鎖脂肪酸および胆汁酸を添加した際のmiR-20a-5pの発現レベルを解析する。 2) 高脂肪食摂取により増加したマウス大腸粘膜固有層白血球のmiR-20a-5pが、標的遺伝子であるNr4a3の発現低下を介して制御性T細胞への分化を抑制しているかどうかを確かめる。具体的には、制御性T細胞誘導条件下において、EL-4細胞にmiR-20a-5p mimicを遺伝子導入した際の制御性T細胞の分化レベルを遺伝子発現解析およびフローサイトメトリーにより比較する。
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