2023 Fiscal Year Research-status Report
深層学習を用いた栽培環境比較による「シャインマスカット」開花異常発生要因の解明
Project/Area Number |
22K14885
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大迫 祐太朗 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (50910402)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ブドウ / シャインマスカット / 画像解析 / 深層学習 / ドローン / 未開花症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,発生要因等が未だ詳しく分かっていないブドウ「シャインマスカット」の花に関する障害である開花異常症(以下,『未開花症』と表記)に関して,圃場調査とその画像解析という観点から,発生圃場と非発生圃場とを網羅的に比較調査することによる要因解明を目指している. 2023年度は,2022年度のデータをもとに効率的な圃場調査の手法・時期を決定することができ,圃場画像データの蓄積を引き続き計画通り進めることができた.2022年度には一般的なデジタルカメラで撮影した棚下からのブドウ樹画像を利用することで,葉面積指数との相関が非常に高い指数を簡易的に算出することを見出したが,2023年度のデータにおいても同様の傾向を得ることができた.このことからブドウ圃場画像の解析における一定の解析手法を提示可能であると考える.また,ドローンによるブドウ樹の棚上画像という新たな観点のデータ収集も引き続き進めており,『未開花症』の発生園・非発生園間における圃場や樹の違いを定量的かつ客観的に評価する手法の開発を継続した.こられの調査から得られたデータから,2022年度と同様に『未開花症』の発生と樹勢や圃場の様子との間にある程度の関連性があることが示唆されたが,未だ明確な関係性を述べるには至らなかった.一方,2023年度は2022年度と比較して調査圃場数を倍以上に増やしており,今後の解析でより明確な関連性を見出せる可能性がある. また,2023年度は『未開花症』は全国的に広く知られるようになり,これを問題視する農家数も増加した.『未開花症』への対症療法的な管理には早期発見が不可欠であるが,初見では障害の有無の判断が困難な場合も多い.そこで開花期の花房画像より『未開花症』の有無について識別可能な深層学習モデルの構築も行い,その結果,画像から高い精度で障害の有無を判別可能であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圃場画像の解析について,昨年度に引き続き順調に進めることができた.昨年度見出した指標に関しては年次をまたいだ検証も可能なデータを収集することができており,実用的成果に向けた調査が進められていると判断している. 昨年度に不十分であった調査圃場数についても,2023年度は2022年度と比較して倍以上の圃場数を調査することができ,更なる解析の進展が期待できる.『未開花症』発生花における解剖学的・分子生物学的調査に関しても昨年度に引き続き計画的なサンプリングを実施しており,サンプルの処理も進めている. 上記に加えて,『未開花症』への対症療法的な管理のため,開花期の花房画像より『未開花症』の有無について識別可能な深層学習モデルの構築も行った.『未開花症』に関しては生産地においてその意識に時流の変化があり,現場で利用可能な実践的な手法として一定の成果を上げることができた. 以上,全体的な調査の進捗および解析状況から,おおむね予定通りの進捗であると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は調査圃場数を大幅に増やし,データ数およびその多様性の充実を図ることができた.2024年度は引き続きデータ収集を行うとともに,これまでに蓄積したデータをもとに,『未開花症』の発生圃場・非発生圃場間における差異について,年次間の傾向も踏まえた解析を行う.これまでに見出した解析手法が年次を跨いでも活用可能か検証するとともに,それらに関して深層学習による解析も踏まえたモデル化を行い,2024年度のデータが適用可能か検証する. またこれまでに収集したサンプルをもとに解剖学的・形態学的調査も完了させ,圃場画像データとの関連を精査し,『未開花症』に関する網羅的な解析を完了させる.
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Causes of Carryover |
2023年度はデータ量の充実を図るために,調査対象の圃場数を2022年度と比較して大幅に増やした.その結果,最終年度に完了を計画する解剖学的・分子生物学調査の対象サンプルも増加することが想定され,その調査・解析を確実に遂行できるように次年度使用額について検討した.また新型コロナウィルス感染症の影響が減り,農家や研究協力者との現地調査や対面での打ち合わせが増加することも想定された.以上のことを検討し,2024年度のスムーズな調査遂行のためにも次年度使用額が生じた.
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