2022 Fiscal Year Research-status Report
ネコモルビリウイルスの持続感染に不完全ウイルスRNAが果たす役割の解明
Project/Area Number |
22K14999
|
Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
坂口 翔一 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (20815279)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ネコモルビリウイルス / RNAウイルス / RdRp |
Outline of Annual Research Achievements |
欠陥干渉(Defective interference, DI)とは、ウイルスが野生型ウイルスの複製を妨害する欠陥ウイルス粒子を生成することで起こる現象である。DIゲノムは、これらの欠陥粒子をコードし、複製中のエラーや組換えなど、様々なメカニズムで発生する可能性がある。DI粒子は一般的に不完全であり、複製に必要な必須要素を欠いている。DI粒子がウイルス集団に存在する場合、野生型ウイルスと細胞資源を奪い合い、ウイルス全体の収量を減少させる可能性がある。この干渉は、ウイルス増殖を制限し、その病原性を低下させることができるため、場合によっては有益である。一方、組換えによってウイルス変異体の出現につながる可能性もある。 本研究では、ネコモルビリウイルスが産生するDIゲノムの検出と同定を行い、DIゲノムが宿主細胞に与える影響を明らかにすることを目的としている。今年度はFLDS法によるDIゲノムの網羅的解析を行った。まずネコモルビリウイルスSS4株とネコの腎臓由来CRFK細胞を用い、経時的に得たウイルスRNAをテンプレートにRT-PCRすることでDIゲノム産生の変化を調べた。その結果、今回用いたウイルスストックに感染したCRFK細胞中には、早期からDIゲノム産生が起こっていた。また、PCR産物の電気泳動結果より複数のバンドが確認されたことから、PCR反応で効率よく増幅されたDIゲノム以外のDIゲノムも産生している可能性が示唆された。最もよくPCR増幅されたDIゲノムの配列を調べたところ、3’末端から5'方向に伸長し、L遺伝子内で複数回のスプライシングを経て3’末端に戻るコピーバック型DIゲノムであった。さらに、持続感染成立後の二本鎖RNAをRNA-seq解析することでDIゲノムを含むmetatranscriptomeデータを得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は不完全ウイルスRNAの全体像を明らかにする次世代シークエンス解析を予定していた。まず、解析に必要なネコモルビリウイルス持続感染細胞の樹立を行い、RT-PCRによって複数のDIゲノムが産生されていることを確認した。次に予定通り、FLDS法により二本鎖RNAを抽出し、RNA-seqを行い、データの取得が完了した。したがって、ウイルスを用いた実験は順調に進捗した。一方、データ解析について、リファレンス配列へのマッピングを行うことでDIゲノム由来リードを抽出予定であったが、こちらは未完了であり2023年度に行う予定である。これらの結果をふまえ、おおむね順調に進展しているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は申請書に記載のとおり、急性感染から持続感染成立までの不完全ウイルスRNA産生の経時的変化の解析を行い、さらに不完全ウイルスRNAの人工合成に取り掛かる予定である。また、2022年度に積み残したRNA-seqデータ解析についても取り組む。こちらのデータ解析の課題はリファレンス配列の最適化であり、RNAの構造を加味したデータセットを作成する予定である。
|