2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a new gene therapy method by activating alternative genes using enhancer knock-in
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22K15032
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田邉 彰 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (30749023)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遺伝子機能回復 / 代替遺伝子活性化 / エンハンサーノックイン / 遺伝子治療 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「エンハンサーノックイン(KI)を用いて代替遺伝子活性化による機能回復法の基礎技術の確立」を目的として、3年間の研究計画で進めている。2022年度は遺伝子Xの変異体マウスの表現型について、パラログ遺伝子Yへの鰓弓エンハンサーKIによるレスキュー実験を行い、表現型回復に成功した。 遺伝子Xは胎児期の骨の発生に重要な遺伝子であり、ヒトでは四肢の奇形や頭顔面の形態に関連している。我々が作製した遺伝子Xのホモ接合型変異マウスはシス領域の変異により遺伝子X発現量が3割程度まで落ちており、産後致死とともに頭顔面の奇形を呈す。この遺伝子Xの機能代替のため、ゲノム編集により作製したパラログ遺伝子Yへの鰓弓エンハンサーKIマウスと交雑させ、これら表現型のレスキューを試みた。その結果、遺伝子Xの変異型ホモ接合;遺伝子YのKIヘテロ接合のマウスでは頭顔面の奇形表現型が回復したが、致死は回復しなかった。さらに遺伝子Xの変異型ホモ接合;遺伝子YのKIホモ接合のマウスでは頭顔面の奇形表現型と致死がともに回復した。これらの結果から、代替遺伝子へのエンハンサーKIによる機能回復の第一例を示すことができた。次に分子レベルで詳細に解析するため、E10.5胎児の鰓弓についてRNA-seq実験を行った。その結果、減少していた遺伝子Xの発現量が遺伝子YのKIアレル量依存的に増加していることが分かった。これまでパラログ遺伝子Yは遺伝子Xの下流の経路にあり頭顔面の形態形成にあまり重要ではないと考えられていたが、逆向きの経路として遺伝子Xの活性化に寄与できることが示された。遺伝子Yは頭顔面の奇形のみならず、他の器官でも遺伝子Xの代替として利用できる可能性が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、実施期間の初年度として、複数のエンハンサーKIマウスの樹立を目指していた。しかし、エンハンサーKIを行う遺伝子候補の選定に疑義が生じたこと、そして上記実績で述べたレスキュー実験を優先したことから、それらの樹立を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記実績で述べたレスキュー実験の成果をまとめ学会発表や論文化を目指す。さらに2022年度に行う予定であった新規のエンハンサーKIマウスの樹立を進めていく。
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Causes of Carryover |
エンハンサーKIマウス樹立に関わる試薬等の消耗品費を計上していたが、2022年度は実施が遅れたため計上しなかった。 上記の実験を2023年度に進めるため、消耗品費として支出予定である。
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