2023 Fiscal Year Research-status Report
神経過活動による海馬歯状回疑似未成熟化の分子機序の解明
Project/Area Number |
22K15204
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
村野 友幸 藤田医科大学, 医科学研究センター, 助教 (70887827)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬歯状回特異的に光感受性遺伝子・チャネルロドプシンを発現させ、光刺激によって神経過活動をひきおこし、過活動による長期的な細胞性質の変化を引き起こすメカニズムについて調べた。すでに取得してあった光刺激による神経過活動を誘導したマウスの海馬歯状回のオミクス解析(RNA-seq・ATAC-seq)のデータと、公開データベースから取得したデータを活用し、大規模メタ解析を行ったところ、分裂細胞の有糸分裂期に特異的に発現する遺伝子が、神経細胞であるにもかかわらず有意に上昇していることが明らかになった。続いて、神経過活動が細胞核構造に有糸分裂期様の変化を引き起こすかを調べた。神経過活動を繰り返し誘導した神経細胞では、核膜の破綻、ヒストンH3のリン酸化の亢進、ヘテロクロマチン領域の拡大などが観察された。これらの変化は、いずれも分裂細胞の有糸分裂期において細胞核で起きるものである。このことから、神経過活動が神経細胞の細胞核においても有糸分裂期様の変化を引き起こすことがわかった。有糸分裂期の開始は主にサイクリンB-CDK1によって誘導されると考えられている。そこで、遺伝子編集技術を用いてサイクリンBをノックアウトしたところ、光刺激を行っても有糸分裂期様の核構造の誘導が阻害されないことがわかった。以上の結果から、サイクリンBの発現上昇と有糸分裂期の擬似的な進行が、神経細胞におけるゲノム構造の変化をはじめとする長期持続する細胞性質の変化の原因であることが示唆された。さらに、カルシウムイメージング法を用いて神経過活動による海馬歯状回での情報コーディングの変化について調べたところ、神経過活動を繰り返すことによって空間情報のコーディングが損なわれたのに対し、速度情報のコーディングはむしろ改善されたことがわかった。このことから神経過活動は海馬歯状回の情報コーディングに多面的な影響を及ぼすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進み、論文として纏めて投稿することができたが、未だ出版には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに論文は投稿済みのため、必要に応じてリバイス実験を行う。そのために必要となるイメージング実験用のマウスの準備を進めておく。
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Causes of Carryover |
本年度までに論文化は完了したが、未だ査読中でありリバイス実験を要求される可能性がある。そのための消耗品購入のため次年度使用額が生じた。
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