2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚T細胞の”病原性”を規定する脂質代謝経路の同定とアトピー性皮膚炎への治療応用
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22K15502
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Research Institution | Kazusa DNA Research Institute |
Principal Investigator |
中嶋 隆裕 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 特任研究員 (90910943)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / T細胞 / アレルギー / 病原性T細胞 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脂質代謝によるT細胞の分化制御機構に着目し、アトピー性皮膚炎を誘導する病原性T細胞特有の脂質代謝依存的な機能制御を明らかにし、脂質代謝によって免疫機能を制御することを目的とした。アトピー性皮膚炎特異的な病原性T細胞が脂質代謝依存的に炎症を誘導する機構を明らかにするため、脂肪酸合成の律速酵素であるACC1のコンディショナルノックアウトマウスを用いて実験を行った結果、以下の新たな知見を見出した。 1. ACC1欠損マウスにおけるアトピー性皮膚炎病態の抑制:アトピー性皮膚炎病態モデルマウスにおいて、T細胞特異的あるいは皮膚ACC1の抑制・欠損は皮膚T細胞のIL-3産生を抑制し好塩基球の活性化を抑制することで皮膚炎症が抑制されることを見出した。 2. ACC1はIL-3遺伝子座のヒストンアセチル化を制御しており、ACC1欠損によりヒストンアセチル化が抑制された結果IL-3産生が減弱したことを見出した。 3. ACC1欠損病原性T細胞では皮膚の痒みを誘導することで知られるIL-31の発現が抑制されていることを認めた。 4. 独自のIL-31ノックインノックアウトマウスを作成しアトピー性皮膚炎を誘導した結果、IL-31を欠損した群で皮膚炎症が抑制されることを見出した。 これらの結果より、病原性T細胞の脂肪酸代謝はIL-3およびIL-31の産生を制御しそれぞれが独立して皮膚炎症に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病原性T細胞の脂質代謝がIL-3やIL-31の制御を行い、アトピー性皮膚炎の炎症に寄与していることが示された。IL-3に関しては好塩基球の活性化を介して皮膚炎症を制御していることが示された。またIL-31ノックインノックアウトマウスは蛍光遺伝子を導入しており、今後IL-31産生細胞と脂質代謝について検証していくために大きなツールとなることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)病原性T細胞の機能を制御する脂肪酸代謝の分子作用点の同定 CRISPR/Cas9システムを用いた候補分子の遺伝子欠損とシングルセルシークエンスを組み合わせ、ACC1下流や脂質代謝関連遺伝子のうち具体的にどの分子がIL-3やIL-31の産生を制御するか明らかにする。 (2)病原性T細胞の機能を制御する機能性酵素・脂質の同定 (1)で明らかになった分子作用点に影響を及ぼす脂肪酸代謝を制御する酵素をCRISPR/Cas9システムでノックアウトしIL-3やIL-31の産生能を指標とすることで、病原性T細胞を規定する機能的酵素を同定する。また、飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸などをin vitroで細胞に加えどのような脂肪酸が病原性T細胞の機能を制御するか、どのようなメカニズムで分子作用点および機能性酵素の機能を制御するかを病原性T細胞のリピドミクス解析と合わせて解析することで明らかにする。 (3)ヒトアトピー性皮膚炎由来病原性T細胞の解析 (1)(2)が明らかになったのち、ヒトアトピー性皮膚炎の皮膚検体を用いて標的遺伝子・酵素の疾患への影響を評価する。また、リピドミクス解析を行い機能性脂質の定量を行う。
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