2022 Fiscal Year Research-status Report
小児急性リンパ性白血病におけるNUDT遺伝子多型のディプロタイプ解析方法の確立
Project/Area Number |
22K15944
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
市村 卓也 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (10761900)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 急性リンパ性白血病 / 6-メルカプトプリン / NUDT15 / 遺伝子多型 / デジタルPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2010年1月以降に山口大学医学附属病院小児科で急性リンパ性白血病と診断し、維持療法で6-メルカプトプリンを投与した症例を対象とした。方法としては、患者末梢血中に含まれる正常白血球からキットを用いてDNAを抽出した。次に、キットを用いてPCRを行い、NUDT15 エクソン1およびエクソン 3領域を増幅した。続いて、増幅したPCR産物の塩基配列をダイレクトシーケンス法によりNUDT15多型の有無について解析した。 ダイレクトシーケンスの結果、対象のうち21例が解析でき、16例がNUDT15多型なし、5例が多型ありであった。多型ありの内、3例がc.415C>Tのヘテロ接合性多型、1例がc.52G>Aとc.415C>Tの2つのヘテロ接合性多型、残りの1例がc.415C>Tのホモ接合性多型とc.36_37insGGAGTCのヘテロ接合性多型を有していた。 2つのヘテロ接合性多型を持つ症例について、ディプロタイプ解析のためクローニングを用いた解析を行った。まず、正常白血球から抽出したmRNAを用いて相補的DNA(cDNA)を合成した。合成したcDNAをキットを用いてクローニングし、合計9個のコロニーが得られた。ダイレクトシーケンスを用いて解析を行った結果、2種類の多型はそれぞれ別のアレルに存在することが分かり、複合ヘテロ接合性多型であるとわかった。 また、同症例をデジタルPCRを用いてディプロタイプ解析を行った。まず多型を有するアレルが標識されるようなプローブを設計し解析した結果、c.52G>Aの多型を有する集団とc.415C>Tの多型を有する集団とに分かれ、デジタルPCRで複合ヘテロ接合性多型であることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、解析済みの複合ヘテロ接合性多型を有する1症例に関しては、計画通り多型の塩基配列に対して特異的なプローブを用いることで解析が可能であった。 一方、既報告で複合ヘテロ接合性多型を有する症例は約6%存在することから、対象症例の内2~3例の症例が存在する見込みであったが、現時点で複合ヘテロ接合性多型を有する症例は1例のみであり、他の多型に関してデジタルPCRを用いた解析ができない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、複合ヘテロ接合性多型を有する症例で認めている2つの多型(c.52G>A、c.415C>T)以外の多型について、それぞれの多型の塩基配列に対して特異的なプローブを作成し、デジタルPCRで解析可能か検討することで、今後同じ多型を有する複合ヘテロ接合性多型の症例に対して有用かどうか事前に検討しておく。 また、さらなる症例集積のため、他施設の症例も解析できるように臨床試験を計画し、山口大学医学部附属病院における治験及び人を対象とする生命科学・医学系研究等倫理審査委員会に承認を得た。今後はさらに解析を継続し、複合ヘテロ接合性多型を有する症例を複数集積し検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では複合ヘテロ接合性多型を有する症例が複数あり、それぞれの多型に対してプローブを作成する予定であったが、現時点では複合ヘテロ接合性多型を有する症例が1例のみであり、プローブ作成費用が計画より少なくなったため、次年度使用額が生じた。 今後の使用計画としては、他施設からの症例集積を行い、対象となる症例が増えることでプローブ作成費用が増えるため、この費用に充てる予定である。
|