• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Research-status Report

S-アデノシルメチオニンの造血幹細胞分化での役割の解明

Research Project

Project/Area Number 22K16295
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

加藤 浩貴  東北大学, 医学系研究科, 助教 (50801677)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2024-03-31
KeywordsS-アデノシルメチオニン / MAT2A / 造血
Outline of Annual Research Achievements

S-アデノシルメチオニン(SAM)はメチオニンとATPから酵素MAT2 (MAT2AとMAT2Bの複合体でMAT2Aが酵素活性をもつ) により合成される。SAMはDNAやヒストン、RNAのメチル化に必須のメチル基供与体であり、SAMは遺伝子発現の調節を介して、細胞の分化制御に重要と予想される。造血組織は、造血幹細胞が徐々にその多分化能を喪失しながら、さまざまな機能をもつ多様な成熟細胞へと分化・成熟することで構築されている。同一のゲノム情報(DNA)をもつ細胞が、多様な機能を発揮するためには、DNAやヒストン、RNAのメチル化修飾による遺伝子発現の調節が欠かせないと考えられるが、生体内での造血幹細胞の分化制御にSAMがどう関わるか、その詳細は未解明である。そこで本研究では、薬剤誘導性に造血細胞特異的MAT2A欠損が可能なマウスを作成し、その表現型を解析した。造血細胞特異的にMAT2Aを欠損させたマウスでは、野生型マウスと比較して、造血幹細胞および前駆細胞分画の細胞数が顕著に減少した。さらに、これらのマウスから造血細胞を分取し、野生型マウスに移植後MAT2A欠損を誘導する実験においても、MAT2A欠損により造血障害が認められることを確認した。これらの結果からは、生体内造血において、SAM合成が重要であると考えられる。特に、細胞外からのSAM流入ではなく、細胞自律的なSAM合成が生体内での造血維持に必要である可能性が高い。本研究をさらに推進することで、これまで知られていなかったSAMの生体内造血での重要性が明らかになることが期待される。MAT2AやSAMは各種がん治療の標的としても現在注目されており、その生体内造血での役割の解明は急務といえ、本研究の臨床面での重要性は高いと考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では現在までに、薬剤誘導性に造血細胞特異的にMAT2A欠損の誘導が可能なマウスを作成し、実際に造血細胞でMAT2A欠損誘導が可能であることを遺伝子発現解析などで確認した。MAT2A活性の低下については、質量分析を用いた代謝物量変化測定で確認した。当初の計画に基づき、MAT2A欠損誘導を行った後に、継時的に造血組織を採取し、MAT2A欠損の造血への影響を造血幹細胞分画も含めて解析した。その結果、大変興味深いことに、MAT2A欠損誘導後、わずか数日で造血幹細胞および前駆細胞分画の細胞数が減少することが明らかとなり、比較的短期間のSAM合成障害によっても、造血に大きな影響がでる可能性が考えられた。さらに、移植実験によっても造血細胞自律的なMAT2AによるSAM合成の重要性を示す所見を得た。これにより、細胞外からのSAM流入ではなく、細胞自律的なSAM合成が生体内での造血維持に必要である可能性が高いと考えている。加えて、MAT2Aの欠損が造血に影響を与える機序を解明するため、当初の計画に基づき、野生型とMAT2A欠損マウス由来の造血幹細胞分画に対して網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)を実施した。その結果、実際に多数の遺伝子発現変化が起きていることが明らかとなった。発現変化が認められる遺伝子群の少なくとも一部においては、SAM濃度変化によるエピゲノムあるいはエピトランスクリプトーム変化を介した影響があるものと考えられるが、今後さらにその詳細を解明する。SAMの需要が造血幹細胞のおかれた状況の変化(環境変化)に応じてどのように変化するのかについては、臨床的に遭遇しうる造血ストレスの影響を評価した。その結果、各種ストレスでMAT2Aの発現誘導が起きる可能性を示唆する所見を得ている。よって、本研究は当初予定に基づきおおむね順調に進展している。

Strategy for Future Research Activity

本研究はこれまでのところ、当初の予定に基づきおおむね順調に進展しているため、今後も当初の予定に基づいて研究を推進していく。まず、SAMの需要が造血幹細胞のおかれた環境の変化に応じてどのように変化するかについては、感染性刺激や造血刺激などによる影響の解析を引き続き実施し、再現性を確認する。特に、これらの刺激によりMAT2Aの発現誘導が起きるという確証が得られた場合、その機序についての解析を追加する。MAT2Aが造血幹細胞の維持や分化制御に重要かという点については、これまでの解析から、その細胞自律的な重要性はおおむね確証されたと考えている。しかしながら、本当にSAMが必要であるのか、という点について、MAT2Aを欠損させた造血幹細胞のin vitro培養下におけるSAM添加による救済実験で確認する。さらに、造血においてMAT2AやSAMが重要である機序を明らかにするために、これまでに得られた網羅的遺伝子発現解析結果をさらに詳細に分析する。すでに多くの遺伝子発現変化が起きていることは確認できているため、それがエピゲノム変化によるものか、網羅的オープンクロマチン解析で明らかにする。MAT2AやSAMが造血幹細胞の維持や分化をどのように制御するか、その全貌を解明する。そのなかで、造血幹細胞の分化制御に重要な新規遺伝子が発見される可能性もある。本研究を通じた新規知見を造血幹細胞異常による造血器疾患の新たな治療法の確立につなげる。

Causes of Carryover

当初計画は順調に推移したものの、諸経費は予定よりも少なく押さえられたため。次年度には、より大規模な解析を行う可能性があり、本年度の残額を次年度に使用する予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2023 2022

All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 4 results)

  • [Journal Article] Heme-dependent induction of mitophagy program during differentiation of murine erythroid cells2023

    • Author(s)
      Ikeda Masatoshi、Kato Hiroki、Shima Hiroki、Matsumoto Mitsuyo、Furukawa Eijiro、Yan Yan、Liao Ruiqi、Xu Jian、Muto Akihiko、Fujiwara Tohru、Harigae Hideo、Bresnick Emery H.、Igarashi Kazuhiko
    • Journal Title

      Experimental Hematology

      Volume: 118 Pages: 21~30

    • DOI

      10.1016/j.exphem.2022.11.007

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Elucidation of the Role of FAM210B in Mitochondrial Metabolism and Erythropoiesis2022

    • Author(s)
      Suzuki Chie、Fujiwara Tohru、Shima Hiroki、Ono Koya、Saito Kei、Kato Hiroki、Onodera Koichi、Ichikawa Satoshi、Fukuhara Noriko、Onishi Yasushi、Yokoyama Hisayuki、Nakamura Yukio、Igarashi Kazuhiko、Harigae Hideo
    • Journal Title

      Molecular and Cellular Biology

      Volume: 42 Pages: -

    • DOI

      10.1128/mcb.00143-22

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Exploring the mechanistic link between SF3B1 mutation and ring sideroblast formation in myelodysplastic syndrome2022

    • Author(s)
      Ochi Tetsuro、Fujiwara Tohru、Ono Koya、Suzuki Chie、Nikaido Maika、Inoue Daichi、Kato Hiroki、Onodera Koichi、Ichikawa Satoshi、Fukuhara Noriko、Onishi Yasushi、Yokoyama Hisayuki、Nakamura Yukio、Harigae Hideo
    • Journal Title

      Scientific Reports

      Volume: 12 Pages: -

    • DOI

      10.1038/s41598-022-18921-2

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Congenital sideroblastic anemia model due to ALAS2 mutation is susceptible to ferroptosis2022

    • Author(s)
      Ono Koya、Fujiwara Tohru、Saito Kei、Nishizawa Hironari、Takahashi Noriyuki、Suzuki Chie、Ochi Tetsuro、Kato Hiroki、Ishii Yusho、Onodera Koichi、Ichikawa Satoshi、Fukuhara Noriko、Onishi Yasushi、Yokoyama Hisayuki、Yamada Rie、Nakamura Yukio、Igarashi Kazuhiko、Harigae Hideo
    • Journal Title

      Scientific Reports

      Volume: 12 Pages: -

    • DOI

      10.1038/s41598-022-12940-9

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] TM5614, an Inhibitor of Plasminogen Activator Inhibitor-1, Exerts an Antitumor Effect on Chronic Myeloid Leukemia2022

    • Author(s)
      Sasaki Katsuyuki、Fujiwara Tohru、Ochi Tetsuro、Ono Koya、Kato Hiroki、Onodera Koichi、Ichikawa Satoshi、Fukuhara Noriko、Onishi Yasushi、Yokoyama Hisayuki、Miyata Toshio、Harigae Hideo
    • Journal Title

      The Tohoku Journal of Experimental Medicine

      Volume: 257 Pages: 211~224

    • DOI

      10.1620/tjem.2022.J036

URL: 

Published: 2024-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi