2022 Fiscal Year Research-status Report
大規模ゲノミクスと機能的スクリーニングに基づく新規がん治療標的の探索
Project/Area Number |
22K16323
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平林 茂樹 九州大学, 医学研究院, 助教 (30910947)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がん / 血液腫瘍 / CRISPRスクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のゲノム解析の進展により、血液腫瘍・がんの発症・維持に関与する遺伝子異常が複数同定され、それらに対する分子標的薬が開発されてきた。しかし、腫瘍に多様なクローンが存在するために、一部のクローンを分子標的薬で駆逐しても治療抵抗性の他のクローンが増殖し、根治がしばしば困難である。それゆえ、今なお従来の化学療法が欠かせないものとなっている。本研究ではがん細胞と正常細胞の生存に必須な遺伝子を同定することで、重篤な有害事象を抑えながらも血液腫瘍を主とした多彩ながんに奏功する新規治療法の開発を目指しており、がん細胞の生存に必須な遺伝子をノックアウトする独自のgRNAのプラスミドライブラリを作製する必要があった。そのため、2022年度はgRNAのプロトスペーサー配列に対応するオリゴプールのcomplexityを損なわないようにプラスミドにクローニングする条件(PCR、プラスミドのアセンブリ方法、コンピテントセルへの導入方法等)を検討し最適化した。また、臍帯血の造血幹細胞で行う前に独自に作製したライブラリを用いて実際にCRISPRスクリーニングを細胞株で行い、ライブラリのcomplexityが損なわれていないことを確認し、positive controlとnegative controlが正しくCRISPRスクリーニングの系がワークすることを確認した。また、作用機序の解明のために必要なdTAGシステムが必要であるので、白血病細胞株の内在性の標的遺伝子に効率よくタンパク質分解のタグであるFKBP12 F36Vを効率良くノックインする条件を検討した。実際に、FKBP12をノックインした白血病細胞株にdTAGを投与し標的タンパク質分解の表現型が生じることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臍帯血の入手先として了解を得ていた医療機関からの臍帯血の提供が医療機関側の事情により急遽不可となり、実験に必要な臍帯血が入手できなかったため、研究の進捗にやや遅れが出ている。 現在他施設から臍帯血の提供に関して協力いただける旨を取り付けており、臍帯血の使用に関してIRB審査の準備をしている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト臍帯血の造血幹細胞の培養に関して、長期培養可能な培地の報告がなされており(Sakurai et al., Nature 2023)、この培地を用いて、造血幹細胞の増殖させ、CRISPRスクリーニングに必要な細胞数を確保する予定である。また、可能であれば、single-cell CRISPR スクリーニングも実施し、ノックアウト時の造血幹細胞のトランスクリプトームも取得したいと考えている。CRISPRスクリーニングにより、造血幹細胞の生存には必須ではなく、がん細胞には必須な遺伝子を同定した後、がん細胞株の標的タンパク質をdTAGシステムで分解し、NET-CAGEを実施することで細胞死を誘導するメカニズムに迫る。
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Causes of Carryover |
臍帯血の入手ができず、実施予定であったCRISPRスクリーニング実施できなかったため。 2023年度にCRISPRスクリーニングを実施して、シーケンス費用や試薬費に使用する予定である。
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