2023 Fiscal Year Research-status Report
肥満による大腸がん発症・進展機構の解明:老化細胞の代謝変動に着目して
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22K17793
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 耕一郎 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 講師 (10794274)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大腸がん / 肥満 / 炎症 / 脂肪酸結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、肥満により増加する脂肪組織内の老化細胞に着目し、FABP5を介する代謝変動による炎症性シグナル活性化機構を解析することで、肥満に伴う炎症や代謝異常と大腸がんを結びつける分子基盤を確立することを目指している。2023年度は、大腸がん細胞で悪性度依存的に炎症系シグナルが活性化するメカニズムをFABP5に着目して解析した。 まず、大腸がん細胞でFABP5の発現がどのように制御されているのかを解析したところ、FABP5はプロモーター領域が悪性度依存的に脱メチル化され、その発現は転写因子NFκBにより直接制御されていることがわかった。次に、プロモーター領域が脱メチル化されるメカニズムを解析したところ、DNAメチル化酵素DNMT3B2(活性型)の発現量が大腸がん細胞の悪性度依存的に低下していることを見出した。悪性度の高い大腸がん細胞では活性型のDNMT3B2の代わりに不活性型のスプライシングバリアントであるDNMT3B3やDNMT3B4の発現量が上昇していたことから、mRNAのスプライシング機構の変動によるエピジェネティック制御の破綻が、大腸がん細胞におけるFABP5の高発現に関与している可能性が示唆された。さらに、大腸がん細胞におけるFABP5の機能解析を進め、悪性度の高い大腸がん細胞では、NFκB依存的に発現したFABP5がIL-8の発現を介してNFκBシグナルを活性化するフィードフォワードループを形成していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究機関の動物実験施設の不具合により動物実験に遅れが生じているため、研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では肥満や、それに伴う炎症・代謝異常が大腸がん発症・悪性化にどのように関与しているのかを、脂肪組織内の老化細胞の代謝変動(特にFABP5を介する脂質代謝)に着目して解析することを目的としている。現在、FABP5ノックアウトマウスの育成を準備しており、次年度中頃にはノックアウトマウスを用いた実験を行い、肥満と大腸がん発症との関連をFABP5を中心とした脂質代謝に着目して解析する。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の動物実験施設の不具合により動物実験に遅れが生じたため、当初2023年度に予定していた動物実験に関する費用を次年度に使用することにした。その他の実験計画に関しては大きな変更はないため、あらかじめ予定していた次年度分の助成金使用計画に変更はない。
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